検索窓
今日:2 hit、昨日:1 hit、合計:38,554 hit

アサガオの花言葉3 ページ3

お風呂に入ったのはいつぶりなんだろう。

家に住める金も、銭湯に行く金もなかった。

全て食費や衣類で精一杯だったから。

久しぶりに浸かるお湯に涙が出そうになる。

小さい頃、よく父親と一緒に入った。

お風呂から出れば母が髪を拭いてくれて。


「Aの髪は、お父さんと同じ黒髪でとっても綺麗ね」


指と指の間に髪を通し、しっかりと優しく乾かしてくれて。

気持ちよくてよく目を細めていた。


「…私、ここで何してるんだろ」


こんな広い戦艦の中で警戒もせず風呂に入るなんて、あまりにも無防備すぎる。

もしかしたら殺されるかもしれないのに。

けど、あの晋助という男に全く恐怖心を抱かないのはなぜ。

船内にいた男たちやあの女の反応からして、きっと晋助はこの組織のトップだと推測できる。

女は「様」なんてつけて呼んでたし。

…一体何者なんだろう、あの男は。


風呂から上がると、先程まではなかった衣類が用意されていて。

誰か本当に用意してくれたんだ。

体を拭き、有難く服を着用する。

そして母親の手を思い出しながら髪を拭いた。

ポンポンと何度が軽く叩いて、毛先を優しく包んで。

あの長い指で、優しい声で。

もう一度そばにいて欲しい。

お父さんもお母さんも、そばにいて欲しい。

もう何年も昔のことを鮮明に思い出すと、じわりとまた涙が込み上げてくる。

…やめよう、自分が苦しいだけだ。


風呂場から出て、案内された道を戻るように歩く。

晋助の部屋は確か…。

広い戦艦の中で迷わないように思い出しながら辿ると、廊下の向こうに晋助が立っていて。

私に気づいたのかこちらを向くと、ゆっくり歩いてきた。


「ッフ、少しはマシになったか」


鼻で笑いニヤリと口角を上げる。


「お風呂、ありがとう」


「…」


ボソッと呟くようにそう伝えると、晋助はそっと私の髪に手を伸ばした。

指先で触れると、目を細める。


「柔けぇ」


クルクルと遊ぶように弄り始め、今度は手ぐしで私の髪を撫でた。

ドキッと心臓が鳴る。

…お母さんの手と、似ている。


「綺麗な髪じゃねぇか。これからも大切にしろ」


優しい手はそっと離れていき、晋助はそれを言い残し行ってしまった。

その場で呆然と立ちつくす。

何を考えているのか分からない、それに冷たい男に見えたはずなのに。

その優しい手や声や仕草に、冷たい男ではないんじゃないかと。

次第にそう思うようになっていったのだった。

アサガオの花言葉4→←アサガオの花言葉2



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.6/10 (75 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
137人がお気に入り
設定タグ:銀魂 , 高杉晋助 , 夢小説   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

お茶(プロフ) - チノちゃんさん» ひゃぁぁありがとうございますうう泣 (2020年7月20日 1時) (レス) id: 7f31983ff2 (このIDを非表示/違反報告)
チノちゃん(プロフ) - 凄く良かったよぉぉぉぉお (2020年7月20日 1時) (レス) id: 5e7e485832 (このIDを非表示/違反報告)
お茶(プロフ) - きょこさん» わぁぁありがとうございました泣泣 本当に嬉しいです、、、!! (2020年6月28日 20時) (レス) id: 7f31983ff2 (このIDを非表示/違反報告)
きょこ - 高杉〜!!!かっこよすぎる!おもしろかったです。もっともっと読みたい…キュンキュンしまくりでした。ありがとう^_^ (2020年6月28日 17時) (レス) id: 5129d38d73 (このIDを非表示/違反報告)
お茶(プロフ) - みきゃんさん» 了解しました!この作品の番外編をいずれ作ろうと思いますm(_ _)m (2020年6月19日 18時) (レス) id: 7f31983ff2 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:お茶 | 作成日時:2020年3月6日 13時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。