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箱庭の海9 ページ9

目が覚めると、知らない白い天井がうっすらと見えた。

何、よくあるパターンのやつ?

アニメとか、小説とか、映画とか。

こういう時は、大抵そばには可愛いヒロインが…。

痛みを感じたが無理やり首をひねらせ横を見ると、残念ながらそこには可愛い女の子は座っていない。

いたのは目つきの悪ぃ今一番顔を見たくない男。


「おいおい…なんで桜田さんじゃなくてお前がいんの?」


「人が運んでやったのに、んだその態度は…!!クソ、蹴り飛ばしてそのままにしときゃよかった」


悪態をついて足を組んだ土方くん。

誰も助けてなんて頼んでねぇよ。

…って、これどっかで聞いたことあるセリフだな。


「桜田さんは?」


「あ?知らねぇよ」


「その場にいたはずなんだけど。何、俺放置されたの?」


「だから知らねぇっつってんだろ。中庭でお前が転がってるから俺が拾ってやったんだよ」


ハンカチで血を拭ってくれた後、あいつは俺を無視して帰ったのか?

助けてやったのに?

って、これじゃあ繰り返しじゃねぇか。

助けてなんて誰も頼んでない、と

あいつの声が聞こえたような気がした。


「はぁ…ありがとな」


どうでも良くなり、なんとなくお礼を口に出す。

すると、土方くんは目を丸くし口を開けた。


「きっもちわりぃな。急にお礼なんか言うな」


「はぁ!?俺がありがとって言ってやってんだから、素直に受け取れよ!!」


まじ可愛げねぇのなこいつ!!

けど、怒るのもアホらしくなり、俺は保健室であろうベッドの掛け布団に体を埋める。


「動けるようになったら自力で帰るわ」


土方くんに背を向け声をかけると、やつは「ん」と了解の意を示し、帰って行った。

一人ベッドの中で考える。


なんで俺は、ここまでしてあいつを助けたんだ。

こんなボロボロになってまで止める必要、なかったんじゃねぇか。

あいつは慣れてるようだったし、下手に口出ししない方が良かったのかもしれない。


…けど。


寂しそうな顔を見ちまったから。

助けて欲しいと、心のどこかで思ってそうな。


そんな顔を見ちまったから。



「あー、いい事ねぇかなー」



白い天井を仰ぎ、目を細める。

いい事。


桜田Aに会えること。


なんで帰ったんだよ。



そう、いつしか俺は

あいつに対してそんな感情を抱いていたのだった。

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作者名:お茶 | 作成日時:2019年4月10日 1時

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