箱庭の海11 ページ11
違うクラスだと、関わることが無い。
特に高校だと、集会等や委員会がない限り接点を持つことが不可能だ。
どうしたら桜田に近づける。
どうしたら桜田と話せる。
どうしたら…
「いっで!!!」
考え込んでいたら、教科書で頭をぶっ叩かれた。
視線を上げれば科学担当教師の高杉がそこに立っていて。
「問題を解けと言ったはずだ」
「へーへー」
めんどくせぇな。
教科書を開き問題を確認する。
こんなの見ても分かんねぇよ。あーだりぃ。
問題を見て発作が起きそうだったので、諦めて窓の外を見た。
すると、E組の女子が持久走をしているのが見えた。
E組ってことは、桜田いるんじゃねぇか?
目を凝らしどこにいるか探す。
…いた。
前下がりボブの髪を揺らし、緩やかに走る彼女。
この距離でも分かる、良く見えてしまう。
横顔、綺麗なんだよなあいつ。
細い足を動かし、はぁはぁと息を切らし腕をふる。
隣のコートでバスケをしているE組の男子は、桜田に釘付けのようだった。
「いっでぇえ!二回もやるか普通!!」
また頭をぶっ叩かれ、高杉に叫ぶ。
「外じゃなくて黒板だ!!どこ見てんだてめぇ!!」
真っ当な事を言われ、何も言い返せなくなる。
はぁ…。
けどどうしても外の桜田が気になってしまい、もう一度視線を向けた。
すると
バッチリと、桜田と目が合った。
…え。
強い眼差しで、俺を見る桜田。
目が、離せねぇ…。
「坂田ぁ…てめぇほんといい度胸してるな。あ?放課後残らせてもいいんだぜ」
高杉の声が聞こえ、慌てて体勢を戻す。
なんで、見てたんだあいつ。
てか俺の事見てた、よな。
授業が終わり、俺は飲み物を買いに自販機に向かった。
二階の自販機に着くと、先に買っている奴がいて。
見覚えのある奴だと目を凝らすと、そいつは栗色の頭をしていて。
「あ、坂田銀時」
「沖田くんだ」
フルネームで呼ばたのが痒く違和感を覚えていると、沖田は買ったミネラルウォーターの口を開けた。
「Aに近づくの、やめたらどうですかィ」
「は?」
女みたいにでけぇ目をこちらに向け、どうでも良さそうに声を出す。
「内面まで見ようとすると、あいつは余計に心を閉じまさァ。関係を持ちてぇなら上辺だけにしろ。…俺はその上辺も嫌ですがねィ」
奴は一気にミネラルウォーターを飲むと、雑にゴミ箱に投げ入れた。
飲み残った水が少しだけ飛び散り、廊下に水滴を残したのだった。
68人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:お茶 | 作成日時:2019年4月10日 1時