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窓に雨が激しく打ち付ける
普段から覇気のない狂は窓から暗い外を見ながら宙に浮いてだらけていた
その下にいる殺は微かな物音に眉をひそめる
「戻った」
「あ、おかえりー……って、どうしたの？包帯は？」
入ってきたのは全身を雨水で濡らした兄、罪
その目にはいつもの包帯が見当たらない
狂は寝返りを打つように浮いたまま罪を振り返ったが、もう一人の兄の顔色を見た
「……殺？」
殺は挨拶も無しに白い手を伸ばした
「精に会ったな？」
下を向いていた罪の脳が揺れるほど強く引っ張られる
殺は罪の首元の装飾を掴み自分の目の会う高さまで彼の首を引き下げた
「過去に囚われるのもいい加減にしろ！！」
あまりの力の強さに罪の目は驚きに見開かれる
普段誰よりも冷静で声を荒らげない殺が全身に怒気を含み、青い火の粉を散らしている
「精が何故あの時長男であるお前を庇ったのか、その馬鹿な頭で考えろ」
自分よりも小柄な弟の言葉は反論の声を出すことも出来ず、むしろ核心を突いてくる
ボウッと炎が殺の片目を覆った
「足でまといはいらない……」
乱暴に離されよろけた罪を振り返りもせず殺は部屋を出ていった
久しぶりに見た兄の本当の怒りを狂はただ黙って見ていた
＊＊＊
「おい黒龍神！離せよ！」
強制帰還させられた精は黒龍神の操る影によって拘束されていた
黒龍神の背に怒鳴るが拘束が緩まる気配は無い
「何故私が、あの三人にだけ貴方の能力を封じていたかお分かりですか？」
「……はぁ？」
未だ背を向けている彼の顔は伺えない
そんなの、何かやましい事があるのだろう
精は黒龍神が何を考えているのか、何度も心を覗こうと能力を駆使したがまるで弾かれるように体が覗くことを拒む
薄々考えていた
「……本当に、アイツらと兄弟なの？…」
言ったら殺されてしまうのではないかと思って言わなかった聡明な精の本音
あまりにも罪の説得がしつこく健気だったから、精の心は本人が思っている以上に掻き乱されていたようだった
黒龍神はくるりとこちらを向きあどけない少女のように笑った
「大正解です！」
精は呆気に取られその意味を理解しようと脳をフル回転させる
彼らとは本当の兄弟？
それなら何故敵対しているのか
隠していた理由、やっと辻褄が合う
騙されていた＿＿＿＿？
「というわけで、もう一度忘れてもらいますね」
嫌な気配に後ろを振り向くとそこには気味の悪い笑みをした蛇がいた
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作者名：灰猫 | 作成日時：2016年12月7日 5時
