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どこか、世界を一望した少年はもう一度顔をあげる
珀龍神は神々しく今も尚少年ルイを見下していた
「何故対立する？神になって何になる？」
「頂点に立つことに理由などないわ。」
「……端から滅ぼす気らしいね。」
ルイの態度に珀龍神の後ろにいた巨大な獣が唸り出す
これ以上余計な詮索をすれば頭蓋骨を割ると言わんばかりの獣を見て大人しくルイはその場を去った
「白と黒は混ざらないって…？」
＊＊＊
突如現れた男に首を締め上げられた
必死で藻掻くが男はそんな亞琉斗を嘲笑し一方的に語り出す
「お前の母親は運悪く愚かだった。悪魔に惚れただけでなくその悪魔はあろう事か国の頂点だった。
だが悪魔はその女を懐に入れた。何故だと思う？
……純血をもなぎ倒す混血を生み出す為だ。」
男の声にみるみる亞琉斗の顔は血の気を引かせ青くなる
無い右眼が過去のように強く痛み始める
記憶にない父、暴虐な母、孤独な子供
目を逸らしていた過去が、愛によって塗り替えられようとしていた過去が火山のように噴き上げる
王は血筋で受け継がれると誰かが言っていた
「……亞琉斗、お前は魔王である俺の…愚かな人間の母親の息子だ。」
肌の割れる音がする
あの時と比にならない頭の痛み
取れかけていた包帯が風によって攫われた
悪魔は悪魔の首から手を離す
虚ろな目をした人間だったはずの息子を満足げに見定めるとガルトは消えた
＊＊＊
「やぁ、何度もすまない。時間をくれるかい。」
未だ街灯の消えた平原で月に照らされ神秘的に輝く妖と獣の王
秀夜には大きな耳と九本の尻尾、彼は九尾狐の子であった
「……またですか。先程はテューポーンさんと話していたのですが。」
今日はやけに来客が多いですね、無表情のままどこか疲れたように尾を揺らす
「君は人気者だな。」
獅はふっと微笑んだ後真剣な顔に戻ると丁寧に頭を下げた
王である獅が頭を下げる行為にもう驚くこともせず呆れたように見据えた
「君の力が欲しい。君の過去だって蛇が触れているかもしれないんだろう？」
「何度言われてもお断りします。戦争はすきではない。」
国を越えた契約、とても重い話
だが獅は国を守る責任と王としての役目があった
「力が欲しいなら、弟さんにでも頼んでみたらどうです。」
涼しい顔で言った秀夜
顔を上げた獅は瞳孔を開かせかつて聞いたことも無い程の怒気を含ませた声を出す
「いくら君でも言っていい事と悪い事がある。」
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作者名：灰猫 | 作成日時：2016年12月7日 5時
