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シグレがゲームコントローラーを置いた時、丁度フゥリから朝餉の声が掛かった
『You win』の文字しか浮かばない画面を消し隣に寄り添って眠っていた豹を引きずって部屋を出る
「シグ…何徹夜目だ？」
「氷雨おはー。3かな、まだ余裕。」
２階から下りてくる足音、続々とリビングにお馴染みの面子が集まる
寝惚けたままの虎が豹を尾を踏んで宙に舞うのはいつもの事
湯気の立つ食事に箸を動かしていると鈍い弾音が響いたのでシグレは反射的に振り向いた
額を抑えて蹲る千鳥にあーと同情の声が集まった
196cmもある彼は敷居を跨ぐ際、頭を下げなければいけない
「おはよう千鳥くん…大丈夫…？」
「おはよフゥリ……考え事してて…」
「どしたん？」
「あ"っシグそれ俺のたくあん…」
虎の皿からつまみ食いしながらシグレは向かい側の席の千鳥に問いかける
悩みの種は友人について
兄貴分の彪と連絡が取れないらしい
「毎日一回はメール来んだけどよ。」
「ブラコンすぎでは？」
それが二人にとっての日常なら仕方がない
しかし千鳥以外、この中の誰かが彼と特別仲がいいわけでもないので誰も行方を知らない
「そういや亞琉斗も既読つかずだわ。」
不安げな顔をしているのはフゥリだけ
「あの人のことは誰も知らないよ。」
シグレの言葉は冷たくあまりにも当たり前だった
虎が学校へ出発するのを見送るとフゥリも出掛ける準備をする
「何処へ？」
「実ちゃんに会いに。お昼ご飯お願いするね。」
フゥトにエプロンを預け駅に向かった
平日で混んでいる中、待ち合わせ場所にだいぶ早く到着する
心配性すぎる彼女の悪い癖である
約束の時間ギリギリに人混みをすり抜けながら実はやってきた
完全な変装スタイルで最近の人気さが伺える
仕事の合間を縫って予定を作ってくれたのだ
「…亞琉斗のことですよね？」
「うん。千鳥くんと実ちゃんが亞琉斗くんと仲がいいから…分かってるの、でも…。」
荒れてしまった彼にフゥリの声は届かない
たった8歳差だがそれでも親代わりだった複雑で断ち切れない関係
親がおらず兄が寝たきりの実は孤児院には入らなかったものの親戚の家を転々とし、その家がたまたま孤児院に近かったおかげで亞琉斗にいじめられる対象だった
「それでも実ちゃんは亞琉斗くんの数少ない友達…心を開いてる人だから…」
オレンジジュースを飲みながら実は考える
彼が一番心を開いているのはフゥリだと
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作者名：灰猫 | 作成日時：2016年12月7日 5時
