#作業着姿 ページ33
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「アイツこんなところで働かされてんのかぁ...」
「返さなくていい金返すためにね」
キョロキョロ周りを見ながら言う田中先生と真剣な顔をして言う東条くん。
そのまま歩いていると小さな工場があった。たまたま外に居た彼と、目が合う。
「明智くん...」
「...何、何の用?」
作業着姿の明智くんの目は相変わらず真っ暗で、いや、前よりも目に光がなくて見てるだけでゾッとする。
「いや、あの、ちょっと用があって...とりあえず着いてきてほしいんだ」
「はぁ?何で?」
「それは俺たちも分かってないんだけどー...」
そう言って先生は苦笑いを浮かべる。でもちゃんと説明されてないからこう言うしかない。
明智くんは呆れたように溜め息を吐いて歩き出す。
「教師ぶんなよ、俺もう辞めてんだから」
「お前の退学届けはまだ受理されてない。お前はまだ生徒だぞ」
「あっそ、でも行かねぇよ」
するとしびれを切らしたのか隣にいた東条くんが明智くんに駆け寄る。
「頼む、来てくれよ!俺は明智が父親にそんなことされてたって、!」
「...はぁ?父親?」
いつもより低い声でそう言うと明智くんは東条くんの胸ぐらを掴んだ。東条くんはそれでも明智くんから目を逸らさず続ける。
「知ってんだよ。お前、金返させられてんだろ、父親に」
「誰から聞いたんだよ」
「んなことどうでもいいだろ?」
そのまま睨み合いを続ける2人のあいだに田中先生が割って入る。その時、タイミングよく先生のスマホがなった。
「...もしもし...あぁ、今明智と話してて...え、代われ?」
どうやら電話の相手は原田先生らしい。先生は不思議そうな表情を浮かべながら明智くんにスマホを差し出す。明智くんが耳元にスマホを当てた時、大きな声が聞こえた。
「来い!お前の父親は預かった!以上!」
「声デカすぎ...」
「全部聞こえた...」
「誘拐だよね?」
なんて3人がそれぞれ感想を零す。ボーッとしている明智くんに私は恐る恐る近付いて彼の顔を見て言った。
「...明智くん、来てよ。お願い。...学校、辞めないでよ」
「......ちょっと待ってて」
そう言い残して明智くんは工場の中へと消えていく。...来てくれるのかな。
「...明智、Aに甘いんだな」
「え?」
「最初からAちゃんが説得すればよかったんじゃ...」
そう言って苦笑いを浮かべる3人に私は首を傾げることしか出来なかった。
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。 - 桐山漣くん本当にかっこいいですよね、ぜひテニミュをご覧下さい。 (2020年8月21日 0時) (レス) id: 0324f0d530 (このIDを非表示/違反報告)
まるる。(プロフ) - のりぴーさん» コメントありがとうございます!読んでいただけて嬉しいです...!更新頑張ります!! (2019年6月3日 20時) (レス) id: 96c7a89dfd (このIDを非表示/違反報告)
のりぴー(プロフ) - 初めまして!面白くて全部読んじゃいました!笑 先生に片思いしてる主人公と主人公に興味のあるメイン3人辺りの関係がとても素敵です!更新頑張って下さい! (2019年6月3日 14時) (レス) id: b1332d8c7b (このIDを非表示/違反報告)
まるる。(プロフ) - 雪柳.さん» コメントありがとうございます! 神作品だなんて勿体ないお言葉ありがとうございます...これからもよろしくお願いします!! (2019年6月2日 22時) (レス) id: 96c7a89dfd (このIDを非表示/違反報告)
雪柳.(プロフ) - 初めまして!吉沢さんの小説を書いている雪柳と申します!田中先生の小説が見当たらなくて自給自足しようかと考えてた時にまるる。さんの作品に出会いました。神作品でこれからも一読者として応援しています! (2019年6月2日 11時) (レス) id: 6f46d7d183 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まるる。 | 作成日時:2019年5月26日 10時