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海を見つめていたら段々眠たくなってきて、同部屋のファン先輩から鍵を借りてホテルに戻ることにした。
欠伸をしながら、ホールを通ってエレベーターのボタンを押す。
半分目が閉じた状態で体を引き摺って部屋の鍵を開けて、ベッドに倒れ込んだ。
…そうだ、昨日の夜もミンギュとのことであんまり眠れなかった上に朝も早かったから。フカフカのベッドに溶けていくように、眠りにつく。
そう言えば、今夜は宴会があるのに。準備しなきゃ………
泥のように眠っていた所に、声が響く。
目を開けると、見慣れた景色が広がっていた。いつも座っていたマーケティング部のデスク。
隣から聞こえてきた声には見向きもしない。
『あんまり大きい声で言うと聞こえるって』
『大丈夫だよ。ていうか、前回の会議は私のプランが採用されたのに。納得いかない』
あそこに座っていると、砂の交じった風に吹かれている気分になる。
『A？』
いつの間にか、スンチョルさんの声にも見向きが出来なくなっていた。
大好きだった人のことをそんな風に思うことがどうしても許せなかった。そのことも、きちんと伝えられずにあんな別れ方をして。
異動したことも、本当に正しいのかわからなかった。営業部に異動した初日、誰にも話しかけられず、また同じことになるのかな。
そう思った時に目に入ったのが、あの大きなお弁当だった。
『そうだ、ランチに行くなら最近できたカフェがオススメ！』
「A、」
「………ごめんなさい」
素直に伝えられれば、上手くいくのに。理解しているのに、どうして。
唇に柔らかい感触がした気がした。夢じゃないぐらい、現実的な。
そっと瞼を開けると、優しい彼の顔が見える。まだ夢を見ているのかな。
「…ミンギュ？」
ミンギュは、私の髪を撫でて聞いてくる。
「起きた？」
少し起き上がって窓を見ると夕焼けになっている。そんなに寝てしまったのか。あんまり頭が回らない。
「ん？どうしてここにミンギュがいるの？」
ミンギュの手が、私の首の後ろに回った。さっきの感覚が、夢じゃないことを理解する。
黙って抱き締められて、窓から差し込む夕焼けが私たちを包み込んだ。
「…ごめんね」
彼の香りに包まれながら、呟くとミンギュが腕の力を強くした。
「愛してるよ」
掠れた彼の声に、視線が揺れる。
「Aのこと愛してるから、色々言うけど。その度に謝らないで」
そっと頷いて目を閉じると、彼の少し早い心臓の音が聞こえた。
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夏目(プロフ) - エルさん» エルさん、いつもいつも本当にありがとうございます(；；)一番試行錯誤した会社員ミンギュの現実感をお褒めいただけて胸がいっぱいです…！本当にいつも、私の伝えたいことや拘りを綺麗な文章にしてコメントを下さり、ありがとうございます！次作も頑張ります！ (2021年10月16日 21時) (
レス) id: e14acee8c3 (このIDを非表示/違反報告)
エル(プロフ) - まずはお疲れさまでした！繊細な感情のゆっくりとしたステキな描写が大好きだったので寂しい気持ちもあり、幸せな2人を見て満足な気持ちもあり^_^会社員のミンギュになんか現実感満載で←これ凄い 更に楽しめました！ありがとうございました^_^新作楽しみにしてます！ (2021年10月16日 2時) (レス) id: 2a8565ccfe (このIDを非表示/違反報告)
夏目(プロフ) - あやちょるさん» あやちょる様、定期的にコメントしてくださりありがとうございました！そう言っていただけて、本当に嬉しいです。こちらこそ、素敵なコメントをありがとうございました(；；)次回作も頑張ります！ (2021年10月15日 20時) (レス) id: e14acee8c3 (このIDを非表示/違反報告)
夏目(プロフ) - まるさん» コメントありがとうございます。最後まで楽しんでいただけてとても嬉しいです。私もまる様のコメントに安心して、心温まりました…次回作の応援までありがとうございます。これからも励んでまいります！ (2021年10月15日 20時) (レス) id: e14acee8c3 (このIDを非表示/違反報告)
あやちょる(プロフ) - 最後までお疲れさまでした。更新が毎回楽しみな作品でしたので、終わってしまうのが寂しいですが…素敵な時間をありがとうございました!新作も楽しみに待ってます! (2021年10月15日 16時) (レス) @page50 id: 702326c54a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夏目
| 作成日時：2021年8月30日 7時
