まほうの【さとみ】

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目の前に置いてある小瓶に身に覚えがない。

いや正確には、

どこかで見たことはあるが

なんの瓶だったのか覚えていない。

持ち上げて見回すが、

材料表記はなく商品名さえもない。

不思議そうに小瓶を見ていると、

『あっそれさとみさんの鞄から出てきました』

と道村さんが言った。

さ「俺の鞄？」

『なにか分からなかったので』

さ「キッチンに？」

『はい』

そう言えば、

中田が俺の鞄に何か入れたって言ってたな。

鞄の中を漁ると

ﾎﾟﾛﾘとメモが落ちた。

メモを拾い上げ、目を通すと

どうやらそのメモは取扱説明書らしい。




ラブポーション

【効能】
意中の相手の好意を自分に向けれます。

【用法・用量】
１回2滴
お茶などの飲み物に混ぜて使用すること。

【注意】
効果持続は6日間です。
尚、試作品のため…



『さとみさん？』

さ「うわぁ！？」

『そんな驚きますか…？』

さ「えっあっごめんね、すぐ用意するよ」

『はい、よろしくお願いします』

ﾌﾟﾙﾙﾙﾙﾙﾙﾙﾙ

着信音が鳴り響き、一瞬動きが止まる。

『あぁ、すみません。私です』

道村さんは失礼しますと頭を下げ

キッチンを出ていった。

危なかった…

怪しい薬の効能を見られていたら…と思う。

酒が入っているというのに

やけに頭ははっきりしているようだ。









善悪の区別はついているというのに、

俺はやったんだ。

好奇心だっただとか、

愉快犯がよく言う言葉。

今の俺は愉快犯と同じくらいタチが悪い。

いやもっとタチが悪いんだろう。

それを自分自身にさえも

酒のせいだと言いきかせているのだ。

俺は目の前のお茶の入ったコップに

2滴、まほうを垂らした。

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