プールサイドの白鳥 (ページ6)

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Ryuto side

「いてて…」

そう言いながら起き上がろうと

目を開けようとする前に飛び込んできた勢いのある声

「ごめん！ってか、大丈夫？ケガしてない？」

俺の顔をのぞき込んだり

怪我がないかきょろきょろする

知らない女の人

でも、なんかスーツ着ている

けれど、なんだか完全なる「大人」って感じじゃない人

俺は動いたり話したりするたびに揺れるその人のポニーテールを目で追っていた

「…」

ポニーテールを見つめながら俺が何も言わないからか

「もしかして頭打った?」

更に目を真ん丸にして俺の顔を覗き込んでくるこの人

…この人が大人に見えないのは
なんだかこのそそっかしい雰囲気だからな気がする…

「大丈夫です、すいません」

そう言い立ち上がる

彼女も一緒に立ち上がる

「こちらこそ、すいません」

立ったら分かる俺より20センチぐらい小さい人はそう謝った

「いえいえ、俺が前方を見ていなくて…」

「こちらこそ、なんだかぼーっとしていて」

「いやいや…そんな…」

「こちらも…」

お互い謝り倒していて訪れた

…変な空気

すると彼女は「あ、通用口探してるんだった！」と我に返ったような独り言を言ってから
「それでは、なんかやっぱりすいませんでした！」とまた俺に謝ってから通用口とは真逆の方に歩き出した

「通用口ならこっちです」

6月1日

僕が夏服を下ろした日

そう

貴女に初めて会ったと思っていた日

僕は反対側に歩き出した貴女を呼びとめたんだった

高校2年生の夏の始まり

まだプールは解禁されていない