プールサイドの白鳥 (ページ36)

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Ryuto side

「オハイオからおはよう」

今日もまたそう牧野さんに声を掛け通用口から学校に入る

「オハイオってどこだか分かってるのかい？」

そう笑われながらもいつも通り牧野さんから飴を1つもらう

「どこだろ、分かんない」

そう笑うと「あのおっちょこちょいな教育実習の先生に教えてもらいな」と笑われた

そうだね

その
ちょっとおっちょこちょいで
真っすぐで
頑張り屋さんな
教育実習の先生が気になってこんな朝早くから登校しているだなんて

言えるわけもないけれど

飴を受けとりながら

「先生もう来てる？」

と聞いてみる
「結構前に来ていたな」と答える牧野さん

「ありがとう」と答えて、
たぶん昨日より少し軽い足取りで応接間に向かう

でも

え？

応接間には鍵が掛かっている

あれ

いない？

でも、結構前に来ているって…

応接間まで行くのに迷子になったのか

いや
さすがに、もう金曜日

応接間までは迷子にならないだろ

職員室に顔を出す
しかし、担任の神崎先生はなんだか会議中だって言うし…

先生の姿は見当たらない

教室にも誰もいない

先生、どこいったんだ？

こうなった時に
頼るのはやっぱり

「牧野さん！」

「ねぇ、牧野さん、A先生、応接間にも職員室にも教室にもいないんだけれど、どこいるか知らない？」

俺が勢いよく走ってきたせいか
驚きながらも牧野さんは「え、まさか校内で迷子？」なんぞ俺と同じことを言っている

うそでしょ

でも
牧野さんはふと空を見上げた後、思い出したかのように言葉を続けた

「今日は、あれ、プール掃除日和とか言ってたな」