▽ ページ37
.
「A！」
振り返ると大晴がいる。
急いで追いかけてきたのか髪も少し乱れている。
「これ…」
大晴の手のひらにはさっきまで私の物だった指輪。
『あぁ、大晴が買ってくれた物やから。私が捨てるのもどうかなって思っただけやし好きにしてくれて良いよ。』
「そうじゃなくて…いつから？」
『…大晴が彼女と頻繁に連絡取るようになった頃。大晴、めちゃくちゃわかりやすいから気を付けなあかんよ。』
「今日駅で偶然会っただけやねん。Aから遅れるって来てたからちょっと時間あるって言ったら勝手にここまでついて来てん。俺が好きなのはAやから」
『嘘。もう何年も一緒にいたから情があるだけ。』
「こんなことで別れたくないねんけど」
『こんなこと、ね。私にとってはこんなことじゃないねん。大晴は浮気のつもりなかったかも知れへん。でもさっき友達って言う前、少し躊躇したよな。そういうことなんじゃないん？』
一度溢れ始めた言葉は止まることを知らない。
『それに彼女は本気やん。大晴わかってるやろ、あの子の気持ち。だから私と一緒の時でもにやけながらメッセージ送ったりしてたんやろ。そんなことしておいて今更都合のいい事言わんといて。』
俯いたまま何も言わない大晴。
『楽しかってんで。大学が違うからなかなか会えんくても、たまに会えた時に二人で何てことのない話して笑って。何でもない時間が楽しかった。私はずっと変わらず大晴が好きやった。』
「…俺も」
涙を見せたくなくて下を向いた私のすぐ側に大晴が近付いてくる。
『…今は全部後悔してる。大晴と付き合わなければ、出会わなければこんな思いしなくて済んだのにって。』
私の手に触れようとする大晴を振り払い、今度は真っ直ぐ目を見て伝える。
『今までありがとう』
「…A…」
何か言いたげな大晴を置いて歩き始める。
歩くだけで精一杯なくらい苦しくて悲しい。
こんなにも大好きだったんだよ。
▽△▽△▽△▽△▽△
今回は曲をかなり忠実に物語にすることを意識しました。
その結果、途中から急展開感満載に。
たいちぇが一番顔に出やすい気がするので選びました。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 229人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：透 | 作成日時：2022年12月5日 4時
