Crystal _ 虹彩の彼方 ＿

涙で知った本気 ページ21

『やから、ちょお待てって…ッ！』

想いの丈をぶつけて
もう傍には居られない事も理解して

「今までお世話になりましたｯ!」

涙を流す前にぺこりと頭を下げて歩き出す私を

山下さんは何故か逃してはくれなくて

そしたら急に追われる事がなんだか切なくなって

なんだかさっきから私は山下さんと
"鬼ごっこ" みたいにして足早で歩き続けてる

追い掛けてきてくれるのは多分。
山下さんの優しさ…だって解ってるけど

もうこれ以上傍に居るのがツライ…っていうのが
私の中の本音で

だからまるで"鬼ごっこ"

…だって
私は山下さんに捕まるのが怖い…

だってこれ以上素直になってしまえば、
彼女さんとの幸せすら願ってあげられなくなる

追い掛けてくれる事に "優しさ" 以上の何かを求めてしまいそうになる…

…傍に居ていいんだって勘違いしてしまいそうになる…

だから…

『待ってって言うとるやろ…ｯ』

寸でのところで捕まりそうになった腕を思い切り振りほどいてズンズンと前だけ向いて歩く

だって

…こうでもしなきゃダメになりそうだった…

こうでもしなきゃもっともっと欲張って
山下さんの傍に居たくなってしまう気がした


山下さんは腕を振りほどいてズンズン歩く私をそれ以上、追い掛けて来なかったし

背中の遠くの方で息を抑えてる山下さんを感じた気がしたけれど

私も山下さんを振り返ることもなかった


だから
"終わったんだ"…そう思った

いや。ちょっと違うかな

本当は多分、私が "終わらせたんだ"


山下さんの優しさが怖くて
優しさだけじゃ足りなくなって
自分のモノにならない事.解ってるから遠ざけて…

山下さんの話は何1つも聞かないままに
私から始めて私から "終わらせた"

思えばなんて身勝手な想いなんだろう…

なんてワガママな想いなんだろう…

勝手に自分から好きになって
上手くいかないから亜嵐に逃げようとして

結局、亜嵐の事も自分の事も傷付けて

挙句
山下さんに一方的に想いをぶつけて

なんにも聞かないままに "終わらせた"

私だけがくるくる廻って
つむじ風の様に周りを巻き込んで

傷付けて悩ませて…そして勝手に終わらせて…

「私1人で何してるんだろう…」

零れたヒトリゴトに少し泣き笑いしそうになった

あまりにも身勝手過ぎてワガママ過ぎて

そしてあまりにも滑稽で…

それは今まで1度だって感じた事ない想い_

だから

「これが本気…って想いなら.苦しいな…」 なんて呟いたら

ポツリと1つ。身勝手な涙が零れ落ちた

思わぬ告白、彼女の嘘。_Side/KENJIRO'→←あまりにも

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