REAL _最初で最後の恋_

マサカズからの電話 ページ44

『梨香さんに、電話！』

そう電話番をしていたマイさんが言って、
そんな受話器にマサカズから

『…今.ヨーコが息を引き取った…急いで東京きてもらえんかな』

そんな訃報がはいったのは8月


同じく8月生まれのナツミの誕生日から数えて
ちょうど1週間を過ぎた…そんな日だった


…は？……何.言ってるの…？

即座に思ったのはそんな事…だった

…何それ？全然笑えないよ？……

そう思ったけど

マサカズの声も
受話器を通して伝わる雰囲気も

其れはお笑いでも何でもなく真面目な報告だった


『早く来てやって欲しい…ヨーコお前ん事好きやったから』

焦ってる時や感情が上手く纏まらない時

マサカズはいつも関西弁になったから

だから私は…本当なんだ…って思って


ただ。1つ。

"今から行く" としか言えなかった


マイさんとカズハさんにお伝えして
それからそのまま優輝と共に礼服だけバッグにつめて

銀行に走って
それから空港に走って

いちばん先に取れる東京へのチケットを購入して

それから後。私には東京まで記憶は…ない…


いつの間にか東京に着いて

いつの間にかマサカズとヨーコさんが居た家に着いて

そして

いつの間にかセレモニー会場に着いて


…硬く瞳を綴じているヨーコさんを見て

そしてようやく意識が返って大きく…泣いた…



白い服と
綺麗に施された御化粧と

それから項垂れたマサカズと

まだ本当の意味で "其れ" を解っていない2人の姪っ子達

…私が見たモノ。見た世界は

雨が降っていた事も加勢してどんよりと曇っていた…



『マサカズ。式が始まる前に何か少し食っとけ…喪主なんやから…』__

マサカズを気にかけるマサカズの友人たち


その中に私が見つけてしまったのは
紛れもなく …健二郎…だった


合ってしまった眼と眼

慌てて逸らそうとしたのは隣に優輝がいたし

健二郎の隣には知らない女性がいたから…



『マサカズ。何も食えへんかも知れんけどなっちゃんとみーのためにもちゃんと食うたれ…そして食わせたれ』

マサカズを気遣う健二郎は
あの頃となんにも変わらず優しくて

そして誰ひとり

此処にいる人。1人たりとも健二郎の事

三代目なんて余計なフィルターなんか掛けず

ただの1人。
ただの友人として接していた


優輝を除いては


健二郎を見て固まる私に健二郎はただ。
マサカズの妹として "久々やな" 言ったけど

私は何も言えず
ただ。きゅっと震えそうな脚に力を込めていた

そんな事しか…出来なかった…

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