健二郎 ページ33
ガチャリと出て行った健二郎に
なんにも言えなかった私は
気がついたら突っかけだけ履いて飛び出してた
タクシーはブルルンと音を立てて動き始めていたけど
それでも私は健二郎がくれた指輪を高く高く翳して
大きく大きく手を振って見送った
動き出すタクシーと私の距離は
少しずつ.少しずつ遠ざかるけど
聞こえないかもしれない…なんて思うことなく
「元気でねーっっ!」
「体には気を付けてねー!」って大きく大きく手を振った
タクシーの後ろ窓
健二郎はそんな私に
笑ってるような.泣いてるような複雑な顔をしていたけど
それでも
タクシーはそのうち、ゆっくりとスピードを落として
やがて止まったから
私はもう何も臆する事なくタクシーに向かって走ってた
健二郎もタクシーから降りてた
突っかけだけしか履いてない私は何度かすっ転びそうになったり
裸足に小石が跳ねたりしていたけど
それでも泣きながら走り続けてた
そしてやがてぎゅっと飛び込んだ健二郎の中
私も健二郎も
忘れたみたいに周りなんか気にならなかった
それは
"人の通りがなかったから"なのか
"お互いがお互いしか見えていなかったから"なのか
私には健二郎の想いまでは解らないけど
少なくとも私には後者でしかなかった
私には健二郎しか見えていなかった
ぎゅーっと背中に腕を廻して
思いっきり匂いを吸い込んで
何秒なのか何分なのか
…とても短い時間をそうやって過ごして
その体を離れた時には私はもう笑う顔をしてた
"また会えるよね…?"
そんな精一杯の質問に健二郎は"あほか。"
そう鼻で笑ったけど
その後に "当たり前やろ" って言ってくれた
だからもういいや…って思えた
"次"が用意されているならもういいや…って
『頼むから泣かんといてくれよ?』
健二郎の声が焦ってたから私は笑ってしまった
でも笑ってしまったら笑ってしまったで
『なに笑うてんねん』 って拗ねられた
"好きだよ"
それを思いっきり伝えた
"うん。俺も…"
それを思いっきり聴いた
それだけで福岡↔東京に勝てそうな気がした
単純だけど…
それから私は指輪を1回だけ健二郎に返した
その意味を解った健二郎はまた鼻で笑ったけど少しだけ強引に私の左の手を掴んだ
そしてその後.健二郎は
カッコつかんな…って小さく苦笑いした
かっこよく嵌めて欲しかった指輪は
私の指より細くて
走ったり
泣いたり
そんな後の私の指にはきちきちで入らなかった
健二郎らしかった
154人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「芸能人」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
梨香(プロフ) - にゃりんさん» あと。楽しんでくれて本当にありがとう…この作品は私にとってSpecialなので褒めてもらえるとホッとするよ (2019年8月28日 18時) (レス) id: 64c500100f (このIDを非表示/違反報告)
梨香(プロフ) - にゃりんさん» いひひ。最後はどーなるのかなぁ(笑)…女の子が夢中で健二郎を好きなコトと情景がいい塩梅に描けてたら嬉しいな…☆ (2019年8月28日 17時) (レス) id: 64c500100f (このIDを非表示/違反報告)
にゃりん(プロフ) - 梨香さん» なんかね、恋愛に純粋だった頃を思い出すね。にゃりんぐらいおばちゃまになってから読むと心が洗われるね(笑) 日記っぽく書いてるから余計かな〜。終わりは日記調じゃない方がよりリアルかも! なーんて偉そうに言ってみたけど、つまりは楽しく読んでます(爆) (2019年8月28日 17時) (レス) id: 71dba2f90e (このIDを非表示/違反報告)
梨香(プロフ) - にゃりんさん» にゃーちゃんだからこそ聴きたい!この作品どんな? (2019年8月28日 12時) (レス) id: 64c500100f (このIDを非表示/違反報告)
にゃりん(プロフ) - 梨香さん» なるほどね〜♪等身大のお話だからリアルなんだね!!それを踏まえてもう一度読みなおそーっと(笑) (2019年8月28日 12時) (レス) id: 71dba2f90e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:梨香 | 作成日時:2019年8月27日 11時