第132話 先を読む ページ42
「師匠、クローム姉さん、ここからはミーに任せてくださいー」
「……まぁ、いいでしょう」
「わかった」
無表情ですが、わくわくしているのがよくわかります。
後でどうなっても知りませんよ。
「純度100％の雨の炎のプールってどんなかわかる？ 雨の炎は“鎮静”。すべての分子の運動を停止に近づけるわ」
「マジヤバ…」
「まさかここまでできるとは！！」
「強すぎるわ！！」
「バ〜イにゅ〜」
呼吸困難に陥ったために蒼褪めた彼らが雨のフィールド内で血をまき散らし……そして静かになる。
残るはXANXUS、獄寺隼人、真美に雪那と雪華ですね。
「！」
「どーだ？ バーロー、部下がやられた気分は」
「てめぇはいちいちアリンコの死に動揺するか？」
憤怒の炎を込めた拳銃がザクロに直撃し、彼の匣兵器が首元に噛みつく。
「ぐああっ！！」
「強ぇ奴が生き残る。それだけだ」
ふむ。ザクロはその強靭な肉体に慢心し、多少の傷は受けてもいいと考えている様子が見受けられますね。
「グハハハ！！ ならばやはり死ぬのは、てめーだ！！」
「！！」
地中から現れたスピノサウルスがXANXUSを襲う。
「ハハン。貴方は私のいるポイントに誘いだされていたのです。戦場では、10手も20手も先を読む者が勝つのですよ」
クフフフ……同感です。
だからこうして僕らは幻術を展開している。
「さぁ、お仲間は死んでしまいましたよ。今、楽にしてあげましょう」
「チッ、どけッ！！」
「真美姉、雪華を頼むッ！！」
獄寺隼人が真美を、雪那が雪華を突き飛ばし、スピノサウルスたちに圧し掛かられる。
ああ、幻術を解いた時の真美と雪那の反応が恐ろしいです…
「お兄ちゃんッ！！！」
必死の表情で手を伸ばす雪華を抱き込み、Fシューズで浮かび上がった真美は赤黒いリングに灯る炎の勢いを強める。
しかし本当に不思議な力です……重力を操るなど、そんなことができるのは真美しかいない。
「ちゃんとくっついててよ、雪華！！ あたしから少しでも離れたら体がパーンッて弾け飛んじゃうからね！！」
二ィ、と顔を歪めて壮絶に笑む真美。
あの顔をしているということは、真美は相当キレている……背筋がぞっとしますね。
「あんたたち全員まとめて……沈めてやるッ！！！」
ギュイィンッ！！！
うわぁ。
重力がかかった負荷によりスピノサウルスの体は四方八方に散乱し、ザクロ・ブルーベル・桔梗は地にその身を押しつけられる。
アレを喰らい生きているとは…
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作者名：霽月 | 作成日時：2019年5月9日 21時
