第106話 腑抜けた顔 ページ15
日が暮れ、あたりが星や月明りに照らされる薄暗闇の中、白銀の炎が周囲一帯に走る。
『チッ』
「……」
本能的にだろう、血翔だけは離さないミドゥーザの表情は依然として凍りついたまま。
まったく…
動く素振りもないミドゥーザを小脇に抱え、地を蹴って高く跳躍し、“消滅”の炎から逃れる。
「三浦ユキ。貴様は雪のアルコバレーノだ……空気中に漂うノントゥリニセッテに苦しめられている筈だがなぜ降参しない？ 今からでもその思考を改め、我の計画に賛同するというならばミドゥーザともども迎え入れても我は一向に構わないのだが」
『何度も言ってるだろ。キミとともに歩むなんて御免だってね！！』
氷クナイを飛ばし、酷氷の炎で“造形”した銃を時間差で発砲する。
『……ミドゥーザ』
「……」
『ミドゥーザ！！』
叱咤の声をあげると、ようやく、しかしノロノロと顔を上げる。
なんだよ、その覇気のない腑抜けた顔は。
◇◇◇
ミドゥーザside
タルボのじっちゃんに羽のついた“氷の目”のような色をしたリングとオネーサンの刀――お梅ちゃんって呼んでたっけ――そんでもって相棒の血翔を渡されたと思ったらバズーカを撃たれて10年後の未来の世界に跳んだ。
そこには何故かオネーサンがいて、パンファと……僕の双子の兄さんの仇である黒兎と戦っていた。
何が何だかわからないながらもオネーサン側について、未来での戦い方を見よう見まねでやって…
本当はもうこの時点で頭パンクしそうだったけど、
―――――じゃ、ミルフィオーレでもボンゴレでもなく、私と共に来い。ついでにキミの雪の者としての呪いを解いてしまおう……私の残りの時間のすべてを懸けてね。
腕を組み、仁王立ちしたままの姿でそう言ったユキ様に視線が釘付けになった。
きらきら輝く“氷の目”から、目が離せなくなったんだ。
一瞬で思ったヨ。
僕はこの人についていく、ユキ様の人柄に心臓を撃ち抜かれて惚れちゃった、ってネ。
でも。
どうしようもなく、兄さんの仇である黒兎が怖かった。
「も、もう無理だ……こんなの、勝てっこない…」
無理だ、そう思った。そう思うほかなかった。
それほど今の状況は絶望的なもので、既に僕の中の闘争心や高揚感は消え失せていた。
どうしてユキ様が黒兎に立ち向かえるのか、理解できなかった。
『その腑抜けた顔、どうにかしてこいッ！！！！』
「エッ……？？？」
その瞬間、僕の体は空に投げ飛ばされていた。
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作者名：霽月 | 作成日時：2019年5月9日 21時
