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私たちとは少し離れたところに住む慎太郎の家までは１０分くらい。
実家を出て一人暮らしを始めた理由は、
「Aと一緒に住みたい」からだって、
将来の約束も暗黙の了解と化してる。
当たり前に合鍵を使って中に入ると、
慎太郎の姿はまだなかった。
半分以上を占める私の私物も、生活感で溢れてる。
ピピッ……ガチャッ
そうこうしてれば、丁度よく慎太郎が帰ってきた。
「……来てたんだ？」
「お疲れ様」
「Aも、」
なんで来たの、なんて言われたらどうしようかと思った。
私自身も、慎太郎に依存してる部分がある。
会社の後輩や先輩、同期、上司からも慕われてる彼は
昔から人気者で、紫耀とは正反対の社交性を武器に人望も厚い。
紫耀は逆に一匹狼なところがあって、掴めない。
だけど、鋭い洞察力、包容力は凄まじい。
思ったことは周りを気にせず平気で言い放つし、
自分の考えは一切と言って良いほど曲げない。
かと言って、ワガママを言うわけじゃないけど、
自然と周りを巻き込む力がある。
まさに自由奔放。憎めないあの笑顔も最大の武器だ。
私だけが平凡で、なんの取り柄もない。
「昨日はごめん」
「……あ、いや、私もごめん」
「なんかさ、今帰ってきたらAがいてすげー安心した」
「え？」
「離れていくかと思った」
そのまま抱き寄せられる。
年々成長していく姿を見てきたからか、
不意に感じる男らしさにはいつもドキドキする。
私より小さかった背も、いつの間にか抜かされて、
かなりの身長差になってるし。
「離れないよ」
「絶対？」
「絶対」
「うん、約束ね」
抱き締める力が更に強まって、
肩に顔を埋めた慎太郎は、首元に吸い付いた。
チクリと痛みが走り、目を向けると、妖艶な瞳で私を見てた。
それが合図のように、身体を引き寄せて、瞳を閉じた。
「いい？」
「うん、」
まだ明けない夜の中、
満天に広がる星を背に２人は愛を確かめ合った。
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作者名：詠夢
| 作成日時：2021年2月7日 7時
