・《 sm side 》 ページ41
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慎「……ごめん、」
Aの顔が見れなかった。
Aに触れる全てが許せなかった。
朝になったら迎えに行こうと思ってた。
だけど無意識に車を走らせて、気付いたら病院まで来ていた。
Aのママがいるとは言ってもあいつらが２人でいるのは腑に落ちなかった。
こんなにもやっぱりAが好きなんだよ。
我慢なんて出来なかった。
やっとのことで付き合えたのに、好きになってくれたと思ったのに、俺がAを一生守るって決めたのに、抱き締め合う２人が絵になり過ぎて、手元からコンビニ袋がすり抜けて行った。紫耀の為にも買った水のペットボトルが床に落ちた。俺が現れても離そうとしない紫耀の目は自信に満ち溢れていて、俺には到底敵わないAとの切れない絆があった。
＿＿「慎太郎が好き」
去年の俺の誕生日。仕事だと嘘ついて、朝から俺の家に来てサプライズで旅行に行こうなんて半ば強引に連れ出されたあの日、確かに " 好き " だと言ってくれた。初めて身体を重ねた日は何にも代え難い幸福で溢れた。俺の為に料理だって勉強してくれたし、自らキスだってしてくれた。誘うのも上手くて、俺を呼ぶ声はいつまでも頭から離れないし離したくないよ。
「しんちゃん、」
慎「……ずるいよ、それ」
甘えてくる時はいつも俺をそう呼ぶ。それに弱いのを分かってて、平気でそう呼んでくる。ようやく目が合ったAの目には涙が溜まっていた。流れるのを我慢した雫が一粒だけ落ちた。
「……わたしね、」
慎「好きだよ」
素直すぎる気持ちだった。
どうにでもなればいい。周りなんか見れない程、出逢った頃からお前しか興味ないし、お前しか好きになれないんだから。
だから分かるんだ。お前が誰を好きで、誰を想ってるか。
必死に俺を選ぼうとしてくれた。好きになろうとしてくれた。少しずつ両想いになれたのは確かだけど、それは幻想に過ぎない。縛り付ける俺の執着がAを苦しめていたのも事実だから。
慎「別れよう」
止まらない涙を拭うのは俺じゃダメだから。
泣かないでよ、泣きたいのは俺なのに。
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作者名：詠夢
| 作成日時：2021年2月7日 7時
