外恋慕【 sh × sm 】 (ページ40)

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紫「今更遅いって分かってる」
　「…………」
紫「だけどもうどうしようもできねえんだよ、」
　「…………」

耳元で聞こえる紫耀の声に、やっぱりどうしてもドキドキする。やめてと振り払えないのは心の問題だろうか。気の持ちようだろうか。ありきたりな言い訳を必死に考える余裕すらあった。頭では理解しながらも、期待が募っては目の前の現実に追いつかない。

何度だって追いかけたその背中に、私は今、猛烈に戸惑いを隠せない。

紫「……俺じゃダメ？」
　「…………」
紫「何か言ってくんないと俺、期待しちゃ……、」

ガサッ

くぐもった掠れた声を遮ったのは慎太郎だった。

慎「……何してんの」
　「……しんたろ、」
紫「……………」

まさかだった。
当たり前に身体は離してもらえない。
胸板を押してもびくともしない。

　「……違うの、」
慎「離せよ、紫耀」
紫「……………」

ゆっくりと離れた紫耀は無言のまま慎太郎を睨みつける。
言いたいことはなんとなく分かった。

紫「離したのはお前だろ」
慎「あ？」
　「ちょっと！」

てめえいい加減にしろよ、と紫耀に掴みかかる慎太郎は初めて見る姿だった。いつも温厚な慎太郎が初めて見せた表情に言葉が出なかった。挑発する紫耀は相変わらず無表情。壁に追いやられた紫耀は、されるがまま。

慎太郎の腕は震えてた。怒りに満ちたあんな顔をさせたのは私だ。

紫「……邪魔者は帰るよ」
慎「……………」
　「紫耀、」
紫「あーちゃんによろしくね」
　「……うん、」

胸元を整えて、私の横を通り過ぎて行く紫耀。
フワッと香る匂いはいつもに増して鼻孔を衝いた。
喉の奥で声にならない想いが永遠と渦巻く。

私のせいで、全てが崩れた。

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