・ 《 sh side 》 ページ39
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仕事から帰ったらあーちゃんがウチに来てた。おじさんは出張で、Aは出て行って、……作り過ぎたらしいカレーを持ってきてくれた。俺も小さい頃から食べ慣れたあーちゃんのカレーが大好きで、久しぶりに食べたらやっぱ美味くて。母ちゃんも嬉しそうに思い出話に花を咲かせてた。
あ「紫耀ちゃんも良い人いないの？」
紫「いないよ」
母「ほんとはAちゃんが良かったけどね〜笑」
あ「あらやだ〜笑」
紫「やめてほんと」
母「慎ちゃんのお嫁さんになるのか〜綺麗だろうね」
あ「気が早いわよ〜」
紫「…………」
作り笑いも甚だしい。息が詰まりそうになった。辛さよりも遥かにツンと鼻を掠める拭えない感情が涙になって溢れてきそうで必死に堪えた。
俺だってビックリだったよ。急に目の前で人が倒れんだもん。スプーンが宙を舞って、皿ごとテーブルから落ちた。散らばったカレーなんか無視して、あーちゃんに駆け寄って、慌てる母ちゃんを落ち着かせて救急車を呼んだ。手元の携帯からAの番号を探してかけたけど全く繋がらない。慎太郎も同様。
……今考えると、俺が慎太郎でも同じことをしていたと思う。
どうにもできない感情って確かにあるんだよ。
" 好き " を計れたら、伝わってたのかな。
抱き締めたら、俺を選んでくれたのかな。
慎太郎との電話を切って病室の前でソファに座るAを確認して、俺も隣に座った。こんな場所で俺は何を考えてんだろう。
「明日の朝、慎太郎が迎えに来る」
「じゃあそれまで俺見てるから寝てていいよ」
「紫耀こそ寝なよ」
突き放された気がして悔しかった。
背中で答えるように俺に見向きもしないAに、どうして俺は歯止めをかけられなかったのだろう。
「……しょ、ぅ、ちょっ、」
「１分だけ」
「…………」
冷え切った身体を包むように自分の心を曝け出した。
やっとの思いで発した声も震えた。
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作者名：詠夢
| 作成日時：2021年2月7日 7時
