雪恋。

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あんまり高価なのも、
気合い入り過ぎてるみたいで、
恥ずかしいし、

安いのも、友チョコっぽくて、ダメだよね。


ってことで、１６００円の、
なかなか可愛いのに決定した。


契約社員で、
田舎から出て来た一人暮らしの私には、
これが限界というのもある。



レジに並んで、お財布出してたら。


「確か、庶務の、お二人ですよね？」


後ろから、そう声かけられて。


振り返ったら、
社内きっての、透明感溢れる美人社員の、
白鳥映美さんが、５千円以上する高級チョコと、
同じく高級ブランドの財布を手に立ってた。

仕事も出来て、男性社員の憧れの的。


私たちみたいな契約社員の下々の者にも、
いつも笑顔で接してくれる。


「あっ、はい。お疲れ様です」


白鳥さんにお辞儀したら、


「そのチョコ、渡すんですか？本命の彼に？」


くすって笑われた。


あれ？


今、毒、感じたよね？

気のせい？


「ええまあ」


私の代わりに、麻衣子が胸を張ってこたえた。


麻衣子は実家暮らしで、
お金に困ってるわけじゃないんだけど、
私と同じ値段のチョコ、選んでるの。


「次の方あ」


呼ばれたから、白鳥さんには会釈して、
お会計してるけど、

このチョコじゃ、ダメだったのかなって、
途端に不安になってきた。


バレンタインにチョコなんて、
誰にもあげたことないんだもん。


彼氏なんていたの、
遠い遠い昔だしなあ。



帰り道、駅までの道のり、
麻衣子の怒りは収まりそうにない。


「感じ悪っ。性格悪っ。
大丈夫。
重岡にチョコの値段なんて分かるわけない」


「白鳥さんて、みんなの憧れなのに。
優しい人なのかと・・・」


白鳥さんは、
重岡と同じ、
広報部にいる。


「知らないの？
あの女は男の前でだけ優しいの。
重岡のこと、狙ってるって噂」


寝耳に水とはこのこと。

落ち込む・・・


あんな綺麗な人に言い寄られたら、
重岡、浮かれ過ぎて、腑抜けになっちゃいそうだ。


好きになっちゃうに決まってる。


戦う前からして、勝負ありだな・・・

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