雪恋。

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急行列車に揺られて、３駅。

そこで乗り換えて、また何駅か。


重岡、帰るの、大変になると思って。


「重岡、もうここで良いよ。
ありがと」


何回か切り出してみるんだけど、
その度、


「ええって」


ちょっと強めに言われて、

私もまだ一緒にいたくて、

結局、最寄り駅まで送ってもらった。


電車の中、楽しかったな。

話が尽きなくて・・・



改札出てすぐのところの、
ドーナツ屋さん。

誘ってみてもいいかな。


まだ終電には少しある。


重岡が腕時計に視線を落として。

泣きたくなった。


「重岡、ドーナツ屋さん、行かない？
おごるよ」


あと少しで良いから、
他愛のないお喋りするだけでいいから。

一緒にいたい。

断られるかなって、不安だったけど、


「A、食いしん坊やな。
付き合うたるわ」


ちょっと誤解されたのは痛いけど、
まだそばにいられる。


「うるさいなあ。
明日からダイエットするからいいの」


嬉しくて、声がはしゃいじゃってた。


また、からかわれると思ったのに、
重岡、目を細めて、優しく笑っただけ。


時々、今まで見たことないような、
大人っぽい表情するから。

その度、胸が苦しくなる。




私が奢るからって言ったのに、
重岡がさらっと払ってしまった。


「重岡、ありがと・・・」


「ええって、こんぐらい」


重岡、照れて、可愛い。


夜中に甘いものはさすがに危険だから、
シナモンドーナツ、
重岡に半分、手伝ってもらうことに。


窓の外の雪を眺めながら、
おしゃべり、途切れなくて、楽しい。

重岡となら、ずっとこうしてられる。


「神山くんが、正社員の登用試験受けてみたらって勧めてくれたの。
自信ないけど、チャレンジしてみようかなぁて・・・」


だけど、この一言で、重岡の顔色、曇ってしまった。


「Aは正社員なりたいん？」


「分かんないけど・・・」


仕事、ちゃんとやっていける自信はない。

正社員の人って、バリバリやってて凄いし・・・


「このままでええて、俺は思うけどな」


はっきり言われちゃうと、
それ以上、何も言えない。

取り立てて、やりたい仕事があるわけでもなくて。


「どうして？
私にはやっぱり無理かな・・・」


「そうやなくて。
正社員なると、もちろん残業あるし、
転勤もあるねんで？
責任も増えるし・・・」

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