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「いいじゃんか。異端も見当たらないしさぁ」
「異端、ですか？」
どうやらルシファー様とノルデ様は、異端の排除のためにこの街を訪れたらしい。
異端について補足しておくと異端には明確な意思がなく、何かの目的のためだけに動いているということだ。そのため、ノルデ様のような明確な意思と感情を覚えた異端は珍しい。
そういえば少し前に、ご主人様が異端のことを「泳ぐ意思だけをもったくらげ」という独特な例えをしていた。どうやらくらげには脳がないらしく、泳ぐ概念も存在していないためただ波の流れに身を任しているのだそう。たまに砂浜にくらげが打ち上げられている理由はそれかと、妙に納得した記憶はまだ新しい。
話を戻すと、異端はまれに例外(ノルデ様のような異端)がいるが、基本的には世界の均衡を保つためには非常に邪魔な存在だ。そのため、私達は世界の均衡を保つために異端を排除するという義務がある。世界が崩れれば悪魔の私達にも影響が出るのだ。
「そー。ノルデくんがこの街から異端の気配がするって言うからきたんだけどさぁ。気配が全然ないんだよねー。彼も太陽の下に出しちゃうと感覚鈍るし、一応連れてみたけどやっぱりだめだったんだ」
私がノルデ様に目を配ると、彼はただでさえ白い顔を一層青白くして目を細めていた。恐らく、体を動かすのさえ難しいのだろう。
私が何か声をかけようとすれば、それを制するようにルシファー様が首をひねった。
「そういえば、サイファちゃんはいつからここで待ってるの？」
「ええと、一時間くらいでしょうか？」
「んー？」
私がそういえばルシファー様は首をひねった。釣られるように私も首を捻る。
「一時間？」
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