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ルシファー様は、身体が動くようになったらご主人様の方へ向かってもいいと言ってくれた。恐らく、何を言っても私がご主人様のところへ向かうのをルシファー様は知っているのだろう。ご主人様は私のいる部屋の隣の部屋にいるらしい。
ルシファー様が部屋を出て行くなり、私は寝台からすぐ足を下ろした。関節を動かすたびに節々が痛んだが、早くご主人様の顔を見たかった。身体よりも心がボロボロなのだ。
壁伝いに部屋を出て、隣の部屋へと向かう。幸いにも一番端の部屋にルシファー様は寝かせてくれていたらしく、部屋に迷うことはなかった。
ドアのノブをひねり、中を覗く。ご主人様はまだ起きていないのか、広がるのは暗闇だけだった。目が慣れ始めると薄らと家具の形が輪郭を映し出し始める。
私は中に入り、扉を閉めた。一層、暗闇は濃くなったが私は記憶を頼りに歩みを進めた。寝台に近づくごとに微かな寝息が聞こえてくる。私はご主人様の前にたどり着くなり膝を折り、上半身だけを寝台のに乗せた。記憶に強く残っているご主人様の匂いだ。
ご主人様は、今も生きてる。分かっていたことだが、いざ目の当たりにすると胸が一杯一杯になった。 溢れ出しそうになる感情を抑えながら、私は寝台の上で顔を埋めた。
「……サイファ、か?」
「え」
「ああ、やっぱりサイファか……泣いてるのか」
大好きな声に私は顔を上げた。声が漏れてしまっていたのだろうか。ご主人様は私の頬を優しく撫でてくれる。
「ご主人様、ごめんなさい」
「……」
「私は自分勝手で無力でした。そのせいで、そのせいであの
「ああ、そうか……そうか」
私の言葉の意味を理解したのだろう。ご主人様は少し苦しそうな声で呟いた。
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