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「……はぁ…」



ボーッと、ルーズリーフにグルグルと円を描く。



板書もままならないまま、ただただ変な絵をルーズリーフに描き続けた。



田中くんに連れ去られかけて、叶さんに助けられてから2時間。



やっと今日最後の講義の終わりかけ。



叶さんは私の要望通り葛葉くんには連絡せず、「気をつけなね」とだけ告げて帰って行った。



腕にはまだ田中くんに掴まれた感覚が残っていて、映像も脳内にフラッシュバックしてくる。



教室を見渡しても田中くんの姿がないことが唯一の救いだろうか。



ふぁ、と欠伸をこぼすと同時に講義終了のチャイムが鳴った。



ガサガサと片付けを始める皆。



私もリュックにルーズリーフや筆記用具をしまい、教室を出た。



すぐに階段を降りて門の方へ向かうと、何やら騒がしい。



こういう時は大体、一般の人でかっこいい人や可愛い人が来たか、なにかトラブルがあったか。



(やだな…巻き込まれたくないな…)



騒ぎを避けるように裏門から出ようと踵を返そうとしたら、ぎゅっと腕を掴まれた。



「っ…!?」



数時間前の感覚が、ぶわっと蘇る。



「やっ…!」



その手を振りほどき走り出そうとすると、背後から思い切り抱きしめられた。



「Aっ…俺」



「っ…く、ずは…くん…?」



周りからわぁっと声が上がるけれど、それを無視して葛葉くんは私の手を引いて大学を出ていく。



腕は優しく掴まれていて、田中くんとは大違いだ。



大学から葛葉くんの家までは電車に乗って2駅。



外に出るのが嫌いな彼は、それに乗って来たのだろうか。



うーん、と考え込んでいると目の前にキキッと車が止まった。



「お、豚」



「葛葉様…相変わらず人使いが荒いですね」



「豚使いじゃね?」



その車からは薄ピンク色の髪の毛をした男の人が出てきて、葛葉くんに厚めの上着をかける。



その人が私に気がつくと、紳士のように胸に手を当ててお辞儀をしてくれた。



私も慌ててお辞儀をする。



「……とにかく家までよろしく」



「かしこまりました」



葛葉くんに手を引かれ、後部座席に乗り込む。



車が発進する直前、大学の女の子たちがなんだか騒いでいた気がした。

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hs - こんにちは!r18の作品のURLをコメント欄に貼ってもらえませんか?どうしても見れないので…これからも応援してます! (2022年9月17日 7時) (レス) @page50 id: 44092dc9d2 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - のんちゃんさん» ありがとうございます! (2022年8月6日 23時) (レス) id: 35e1b11f9c (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - ルカさん» 恐らく年齢設定の問題だと思われます…。18歳以上だと見れると思います…! (2022年8月6日 23時) (レス) id: 35e1b11f9c (このIDを非表示/違反報告)
のんちゃん(プロフ) - スゥッ……久々にみた…てぇてぇ死んだ…………ありがとうございます┏┛墓┗┓ (2022年8月5日 8時) (レス) @page49 id: bbcbbc772c (このIDを非表示/違反報告)
ルカ - 作品一覧を見ても全3件となっているのにr18の作品だけ非表示になってるんですけどどこで見れますか? (2022年7月16日 3時) (レス) @page27 id: 718c8c65a8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作者ホームページ:   
作成日時:2021年11月15日 0時

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