【スタミュ】黒崎蘭丸の従兄弟が綾薙に居るⅥ (ページ43)

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暗幕ページ43

稽古合宿もいよいよ終盤
虎石嫉妬事件が起こった後は、特に何事もなく日々が過ぎて行った
それは、候補生全員が同じ目標へ日々精進をし始めた為だった

一つ、小さな報告をするとすれば、揚羽が壁を乗り越えた翌日に哀葉に謝罪を述べていたことだろうか
前に彼は、哀葉の完璧な模倣を羨ましいと口にして、彼女を怒らせてしまった
その事がずっと気がかりで、仕方がなかったのだとか
対して哀葉といえば

『んあ?あれ、悪いの俺じゃん。勝手に八つ当たりしたんだし……あーでも、ちゃんと言ってくれて、ありがとな』

とまあ、安定の返答だった
揚羽はそれを聞いて、少しだけ柔らかく笑っていた

ーー

稽古合宿終了を明日に控えた夜
哀葉は、遥斗達からある知らせを受けていた

『えっ、つばさちゃんが?』

それは、柊がブロードウェイへ行く事が決定した事の詳細と、キャスト変更のこと
前華桜会、アンシエントに囲まれるという何ともメンタルが弱い人ならひよりそうな光景が広がっているが、哀葉が気にするはずもない

「えぇ。光栄な事に、実力と功績が認められたようです」

『そっかそっか。おめでたい事だな』

後でケーキ焼こう。という哀葉の言葉に、嬉しく思いながらも柊は苦笑で済ませる

『で、ランバート役が居なくなるから、キャス変があるわけっすけど……まあ、この三週間ずっと見てれば誰かは分かります』

「流石に、勘のいいやつには分かるか…お前の観察眼が優れているのもあるだろうが」

魚住からの賞賛に彼女はへらりと呑気な笑顔で返す

『やだなー。褒められても飴しか出ませんよ』

「「何故飴」」

『で、結論から言うと、ホッシーっすよね?』

ポケットからぽん、と飴玉を出してきたことに、総ツッコミが入る中、鳳だけ普通に返答する

「ご明察。このことは、あいつらには言わないでね?」

『それは勿論ですよ、樹さん。秘密は守りますとも』

その後は少し雑談をしてからのお開きとなった
部屋に戻った哀葉はベッドに潜り込み、天井を見つめる

(悠太、平気だといいけど)

彼女が心配するのは、演技力の問題ではなく、メンタルの問題
前に、柊と鳳の練習風景を見て、見惚れていたのを目に留めていた
だからこそ、気がかりだ

(つばさちゃんの事が気がかりで、歌ったり踊ったりが出来なくなる……とか、ならなければいいけど)

こればかりはやってみなければ分からない事だ
哀葉はそこで考えるのをやめ、瞳を閉じる

こうして、三週間の稽古合宿は幕を閉じた