外伝集 (ページ36)

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【アル戦】汗血恋路Ⅰ ページ36

※漫画5巻のOVAの話

愛こそが強さ

ギーヴはそうアルスラーンに語っていた
カシャーン城塞を出て少しばかりの休息中、彼ら二人だけになった際にギーヴが面白がってダリューン、ナルサス、エラムの嘘っぱちの恋愛話を聞かせた
ギーヴの語らいは明らかに洗脳にも聞こえるのだが、それを咎めるべき者はこの場にいない

「愛とは偉大なのだな…」

「えぇそうですとも」

「…確かに、ペルールがあそこまで強く、気高いのも、愛のおかげだ」

アルスラーンの言葉にギーヴはぴくりと反応する
飄々とした笑みを浮かべ、感情がまったくもって表に出ない総都督
そんな彼にも愛する者がいたのか。と興味を持ってしまった

「ほう?あのような御人にも想い人はいるのか。それは興味深い」

「前にペルールが聞かせてくれたのだ。自分の強さは一人の女性から成り立っていると」

「ふむ…あやつもたまには俺と馬が合うようだな」

「今考えれば、その女性はファランギースだったのだな」

またしてもアルスラーンの言葉に反応する。今度は笑顔を引きつらせながら
聞かなきゃよかった。そう後悔するころには遅く、アルスラーンは静かに語り出した

「ペルールとファランギースは幼馴染で、よく遊んでいたそうだ。だが、ある日、族の襲撃を受けて彼女の身が危険に晒されたと…なんとか窮地をペルールが助けたものの、深手を負ってしまったらしい。そのことでファランギースを泣かせてしまったことが歯がゆくて、剣を取ったそうだ」

しかし蓋を開ければペルールの健気さが吐出するだけだった
泣かせたくないから、剣を取る。強くなる。それだけの理由で今の地位に上った

「随分とまあ、美談ですな」

「彼女の恋人が死んでしまった時、自分だけでは支えてあげることも出来なかった…とも口にしていた。ペルールにとって、ファランギースは本当に大切な人なのだと話を聞いて思っていた」

(ファランギース殿に恋人がいたのか!!?初耳だぞ!当たり前だが)

別の所に驚いているギーヴをよそに、アルスラーンはペルールの事を考える。ここまでファランギースを思っているのに、それを本人には一言も言わない。そんな彼女が、健気しかたない

『…何を話しているかと思えば、人の事を容易に喋るな』

「わぁっ!?ペルール!戻っていたのか」

背後にいつの間にか立っていたペルールにアルスラーンは分かりやすく驚く
ギーヴは気付いていたらしく、さほど驚いていなかった