林檎と指環 (ページ5)

今日:8 hit、昨日:0 hit、合計:28,965 hit

005 ページ5

．

『ねえ、北斗。明日、友達にご飯誘われたんだけど行ってもいい？』

娘が寝静まった頃、食事を終えた北斗に相談をしてみる。
相手が樹だと言わない理由は変な詮索をされたくないから。
結婚式やらなんやらで顔を合わせているから面識がないという訳でもないけれど、なんとなく、なんとなく言う気にはなれない、ならない。

「うん、いってらっしゃい。」

『20:30には家を出たいんだけど美緒の事頼んでもいい？』

「うん、丁度明日は早く帰れるから大丈夫。」

『じゃあよろしくね。』

＊

言った通り、北斗は早く帰ってきた。
いつもは遅めの帰りも今日は2時間くらい早かった。

ほらね？優しい。
それは間違いないの。

『じゃあ、私行くね。美緒のことも、よろしく。』

「うん。目いっぱい楽しんできて。たまには息抜きも必要だしね。」

『うん、行ってきます。』

クローゼットの奥に眠っていたブランド物のワンピースにロングコート、パンプス、そしていつもよりも丁寧に施した化粧、全てを身に纏った私はどう見ても既婚者、ましてや子持ちに見えないだろう。

こんなにお洒落をしたのは結婚して以来初めてだと思う。

気づけば沢山の月日が経っていたことに驚きが隠せなかった。

．