絞殺 (ページ19)

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『ふふっ、なーに？』

「っ...」

『何赤くなってるの。かーわい。』

そう言って無邪気に笑う彼女の笑顔を見ていると胸の締め付けが酷くなった。

見つけて数ヶ月、話すようになって数週間なのにここまで彼女に惚れている自分に驚いた。
喉の上の方まで好意を伝える言葉が出てきて、俺は必死にそれを飲み込む。

今じゃない、今じゃない。

今言ってしまえば振られることは目に見えていたし、今先輩とどうにかなりたい訳でもない。

そんなことは頭の中にきちんとあったし、理解もできていたのだが感情はストレートに言葉に成りたがった。

何度も喉をゴクゴクと鳴らし、その言葉を吐き出さないように必死に飲み込んだ。

「可愛いなんて、男に言う言葉じゃないですよ。...先輩の方こそ可愛いです。」

そして俺は好意の言葉の代わりに【可愛い】と言う言葉を彼女に向けて放った。
それが俺が出した【好き】の代わりの言葉だった。

でもそんなのは。

『ふふっ、ありがとう。』

上手く交わされる。

彼女は俺より大人で、可愛いなんて言葉で照れる女ではなかった。

俺の言葉で戸惑ってほしい。
俺の言葉で泣いてほしい。
俺の言葉で胸が疼いてほしい。

俺を、愛してほしい。

そう願ってしまう俺は、強欲だろうか。

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