第14話 ページ14
「はい、どうぞ」
「もし自分に前世の記憶があったらどう思う？」
随分と踏み込んだ質問だな
私が前世を覚えているかどうか確信があるのだろうか、と思うが、彼の探る様な目を見てまだ分かっていないんだろうと少し安堵する。
私を貫く真っ直ぐな目に怯みそうになりながらも、下手な事は言えないと自分に釘を刺す。
「…別に、どうも思いませんよ」
嘘、
毎日のように前世を思い返しては記憶の中の彼等に幸せを思い出すくせに。
「酷く後悔を残して死んだなら、多少は引きずると思いますけど、正直割り切って過ごせる自信がありますし」
嘘、
全く割り切ってなんか無い。だから現に、こうして彼等に隠しているくせに。
「……そうか、呼び出してすまなかったな。もういいぞ」
少しの間の後、グルッペンはそう言った。
漸く終わった、と肩から力を抜く。自分でも驚く程に体が解れた感覚がしたから、思っていたよりずっと緊張していたらしい。
「…失礼しました」
そう言って部屋を出る。扉を閉める時に見えた皆の顔は、どれも顰めっ面ばかりで最後まで声を出す事は無かった。
帰り道、空を見上げれば分厚い雲が天色を覆っていた。
どこまでもどんよりと広がる曇天と共に、考えも暗い方に傾いていく。空は心を写す鏡の様だった。
……あぁでも、そういえば、
「…あの時は、晴れてたな」
あの日、私が彼の亡骸を抱いた部屋の窓から見えたのは、憎らしい程の快晴だった。
心の鏡となったのは綺麗な空の青をくすませる程度の硝煙の色と、戦場で上がった火の色だけだった。
「ふっ…馬鹿みたい」
自分が何より嫌いだ。
彼等の前では隠しているくせに、こうしてずっと前世の事を考えている自分に嫌気が差し、嘲笑した。
ぽつり、ぽつり、目を落としていた先にシミができていた。見上げれば、自分を劈く様に激しくなっていく雨。
傘を持っているにも関わらず、雨に濡れながら私は帰路に就いたのだった。
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ちーず(プロフ) - H2Oさん» 報告ありがとうございます！修正しましたが尚間違いがありましたら教えて頂けると幸いです…！ (2021年3月28日 2時) (
レス) id: 33a1b142e6 (このIDを非表示/違反報告)
H2O(プロフ) - 更新お疲れ様です。毎度楽しませてもらっております。報告ですが、33話が抜けております。ページ数と話数が合ってないと気づき数えたら見つけました。 (2021年3月27日 23時) (レス) id: 085a912a91 (このIDを非表示/違反報告)
千菜(プロフ) - すっごく面白いです！これからも応援してます！！ (2021年1月18日 11時) (レス) id: 36e14b459a (このIDを非表示/違反報告)
ネイト(プロフ) - コメント失礼します！この作品にどハマりしてしまい一気に読んでしまいました(笑)！心の底から本当にこの作品に出会えて良かったっと思っております！大好きです！！！頑張ってください！これからも応援させて頂きます！！！ (2021年1月18日 3時) (レス) id: 58c935ec98 (このIDを非表示/違反報告)
あやややや(プロフ) - 最&高ありがとうございます( ﾟーﾟ)崇めます (2021年1月11日 22時) (レス) id: 074f35644b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ちーず | 作成日時：2021年1月5日 13時
