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8話 ページ10

「げっ!もうこんな時間!帰らなきゃ!!」

ふと時計を見たうらたぬきが、驚いたように声をあげた。


『えー泊まってくれるのかと思ってた。』


「ごめん、明日は仕事なんだ。
浦島坂田船でレコーディング。

終わったら絶対Aの曲歌うから待ってて。」


慰めるようにAの頬を撫でたセンラの手に、すりすりと頬ずりをする。


『んっありがと』




「僕は泊まれますよ!!」


「抜けがけすんな!
明日はアルバムの打ち合わせって言ってただろ!!」


まふまふと坂田が喧嘩を始めるのを、Aはくすくすと笑いながらたしなめていた。




俺以外の5人は立ち上がり、身支度を整える。


「バイバーイ!明日CD買うからー!!」

『ありがと、気を付けて帰れよー』



5人を見送り、ふーっとソファーに座り沈み込んだAは、残ったワインをグラスに注ぎ飲み干す。

『ぬるっ、
そらるまだ飲む?飲むなら新しいの出すけど...』


「俺もすぐ帰るからいらない」

『そっ』






2人の間にしばし沈黙が下りる。



壁に掛けられた時計の針の音が、やけに鮮明に届いた。




静謐を破ったのは俺だった。





「A」


『んー?』






「...さっきは怒ったみたいになってごめん。
あんなこと言ったけど、Aが新しい曲を投稿してくれて本当に嬉しかった。」




『復帰しちゃいけなかったのかと思った。』



「っ、違う!!」



顔を歪めて苦しそうに笑うものだから慌ててAの手を掴む。




違う、そんなつもりで言ったんじゃない。

俺はただ...





ただAのことを知りたかっただけだ。






『ごめん、冗談。
分かってるよ。』



ふっと笑ったAは、ふわりと俺を抱きしめ大きな手でポンポンと優しく背中を叩く。


落ち着くAの匂いが俺を包む。


でも違う、足りない。
これじゃ足りないんだ。


俺は、Aを肯定する確実な言葉が欲しかった。



「もう止めるだなんて言わないだろ?

Aの作る歌が、Aのことが...



好きなんだ...」





『...ありがとう』









そう言って、よりいっそう強い力で俺を抱きしめたAは







決して"やめない"とは口にしなかった。

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ゆきうさぎ - コメント失礼します。作者様の負担になるようでしたら話は別ですが、僕は皆でハッピーエンドが良いと思います。 (2020年9月20日 1時) (レス) id: f935ff1209 (このIDを非表示/違反報告)
あお - 個人的にはhappyendが好きなのでhappyendが読みたいです…! (2020年6月15日 18時) (レス) id: 57a51dc74d (このIDを非表示/違反報告)
匿名主(´・∀・`) - 初めまして、失礼します。個人的にはhappy endが良いんですが…一回何らかの endで完結させてしまって、その後に場面分岐的な終わり方にすれば良いのではないか。と考えております。作者様に負担が掛かってしまいますし、上からで申し訳ないんですが…考えて頂ければと (2020年6月13日 21時) (レス) id: 610e5b95f1 (このIDを非表示/違反報告)
ペン - 初めまして、今日は。 秘かに読まさせて頂いてます。今更なのですが、 happyendが良いと思ってます。体調に 気を付けて更新頑張って下さい。 (2018年6月24日 11時) (携帯から) (レス) id: c5e8935b6a (このIDを非表示/違反報告)
にょむさん - 個人的にはHappy Endがいいです! (2018年6月17日 22時) (レス) id: c18b2f6fe2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:紺碧 | 作成日時:2017年12月3日 21時

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