【男主】伝説のボカロPは歌い手に愛され執着されています【歌い手】

29話 ページ31

分かってた、これは俺のベストじゃないって。

でもそれを投稿した。







怖かった。

コメントがとかじゃなくって、こんなんでいいだろうってその曲を投稿した俺が憎くて堪らなかった。








愛するボーカロイドを、初音ミクを、俺は他でもない自分の手で汚したんだ。



自己嫌悪で死んでしまいそうでした。




音楽が大好きで、妥協が大嫌いだったはずの俺はもう既にそこには居なかった。死んでしまった。
そう思えば思うほど、どんどん自分が嫌いになった。

暗く底の見えない闇に足元から飲み込まれていくようでした。




そうやって足掻いているうちに、

今まで輝いていたはずのミクまでもが、
なぜか
ひどく恐ろしいものに見えてしまった。





そのことが、曲を作れないことより、自分を嫌いになることより、何よりも恐ろしかったのを覚えています。


このままじゃ大好きなボカロを、初音ミクを嫌いになってしまう気がしてどうしようもなく怖かった。

苦しくて苦しくて、このままミクを嫌いになるぐらいなら辞めちゃおうって思ったんです。



誰に嫌われても、裏切りだって言われても、ミクを嫌いになることだけは絶対に嫌だったから。



だから曲を消して、作曲活動も止めました。




ボーカロイドを使った作曲を止めていた二年間も、俺の中でボカロに触れたいもう一度ボカロで曲を作りたいって思いはずっとありました。



でも、怖くて勇気が出なかった。

思うように曲が作れなかったら？
ミクをこれ以上汚してしまったら？

そんな思いが足枷のように俺を縛り付けた。




初音ミクに出会ってから今までの10年間、彼女は俺の全てでした。何よりも大切で、大好きだった。
大好きだから距離を置きました。






ミクを嫌いになるのが、死ぬより怖かったから。

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