30話【救われない】 ページ31
町外れにある小さな森を抜けると、そこには幾重にも重なる塀に守られた強固なコンクリート製の建物。
ここは、凶悪かつ重罪人のヴィランだけが集められたこの国でも最高峰の警備を誇る刑務所だ。
いくつもの厳重な扉を抜け、やっと辿り着いたのは、この刑務所でも最もセキュリティーの高い個室。
「やぁ、オールマイト。
久しいね。」
扉が開かれると、椅子に拘束された人物がまるで誰かが来ることをあらかじめ知っていたかのように訪問者を受け入れた。
「オールフォーワン...」
今回の事件の首謀、
終尾少年や死柄木が先生と呼び、慕い信仰していた男だ。
「Aは元気にしているかい？」
「お前に教えることなど何もない！」
「記憶を消して雄英にいるんだろう？」
「っ！何故それを...」
「"聞こえた"よ。
なんて可哀想なことを...」
告げられた言葉に唖然とする。
オールフォーワンに事件の�莖末や終尾少年の動向など一切の情報を渡していないはずだ。
何か個性を使ったのだろう。
ここで捕まっていれば絶対に手に入れられるはずの無い情報を...何か手を打つべきだと伝えなければ。
オールマイトはキッとオールフォーワンを睨みつける。
「優しい心を持った子だ。
ヴィランになんてなっていい子じゃない。
私達が立派に育て上げて見せる。」
思わず投げつけるように荒々しい口調になってしまったが、オールフォーワンの表情は一つも崩れない。
「そうだ、あの子は優しい。
優し過ぎるほどに。
可哀想に、
このままではあの子は救われない」
「どういう意味だ！」
弄ぶような言葉に我を忘れる。
救われないなんてあるはずがない。
彼は今、ヒーローになるため仲間と共に未来へ向かって歩んでいるのだから。
「答えを直ぐ他人に求めるのではなく、一度自分で考えて見てはどうだろうか、先生？
まあ、Aの先生は僕だよ。
そこは譲れないね。」
捕まっているというのに、オールフォーワンはどこか晴れやかな声で言った。
まるで自分の為すべきことは全てを成し果せたかのように。
「僕の撒いた種はもうじき芽吹く頃だろうね。」
自分を取り巻く空気が少しづつ淀んでいくのを感じる。
言いようのないほど些細な予感。
霧がかった闇が足音もなく近づいて来るようだった。
「僕の可愛い生徒をくれぐれもよろしく頼むよ、オールマイト。」
そう言って彼は、
唇を持ち上げ心底楽しそうに笑った。
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ウタ - 次の展開がどうなるのか楽しみです (2018年7月18日 22時) (
レス) id: 5d727cd1f1 (このIDを非表示/違反報告)
雫(プロフ) - めっちゃいい話だと思います！！更新楽しみにしてます！！ (2018年7月16日 8時) (レス) id: 83591e10d1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - ストーリー展開がとても好みだし、文章が、言葉ひとつひとつが綺麗で好きです。本当に素敵な作品ですね！ (2018年6月24日 21時) (レス) id: bc7a356a9c (このIDを非表示/違反報告)
こパンダ - とてもたのしみにしてます。頑張ってください！ (2018年6月22日 17時) (レス) id: 7360b2bbb8 (このIDを非表示/違反報告)
甘露蜂蜜(プロフ) - あああこれは夢主くん弔くんのこと思い出してほしいやつです…！こういうめっちゃシリアス系好きなので展開がすごく楽しみです。頑張ってください。 (2018年6月17日 23時) (レス) id: 817d133cd9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紺碧 | 作成日時：2017年11月13日 21時
