ずるい ページ14
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今日は1日外回りの日。
珍しく相方もいなくて、寂しい限り。
雨降りそう。分かっていても、つい傘を持ってくるのが億劫になっちゃって、玄関に置いてきてしまった。
『こんにちは〜、Aです」
いつもお世話になっている会社で、そしていつもお世話になっている方で。
「お、来たね〜Aちゃん。今日はよろしく!」
『よろしくお願いします』
雲がさっきよりどんよりしてる。
あぁ、帰りは傘買わないといけないかなぁ。
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『では、失礼いたします。またよろしくお願いいたします!』
なんとか1人での外回りを終える。
なんだかんだ、佐久間くんが横にいてくれると安心するな。仕事のときは、だけど。
『わ、土砂降り……』
案の定、天気雨みたいな勢いの雨が降っていて。
コンビニで傘を買おうとしたら売り切れていた。
面倒くさがった罰かなぁ、なんて呑気なことを考えつつ、カバンが濡れないようにジャケットで包んで、駅まで走る。
『………信号待ち…なんて日だ…』
長めの信号に引っかかってしまい、どんどんブラウスは濡れていく。まだ夏だけど、さすがに濡れると寒い。
信号が青になった瞬間に走り出す、はずだったのだが
「女の子なんだから、体冷やしたらだめっしょ」
肩をびっしょり濡らした佐久間くんがそこにはいて、私の腕を掴んで、後ろからそっと傘をさしてくれた。
どうしてここにいるの、と聞く前に佐久間くんが「心配だったから大雨」と笑って言うから。
『佐久間くん…、ありがとう』
自分だって外回りだったくせに。
ここから遠いところの担当のくせに。
わざわざ来てくれたんだと思ったら、どうしても自惚れてしまう。期待してしまう。
佐久間くんは、やっぱりずるい。
『佐久間くん、濡れちゃうから』
「…おっ、と。結構大胆だねぇ、Aちゃん」
『だって風邪引いたらどうするの』
「Aちゃんに泊まり込みで看病してもらえるなら最高すぎー」
傘を持つ佐久間くんの手を上から握って、傘の角度を少し変える。
いつも触れている手なのに、何か今日はどきどきが止まらない。触れる肩でさえも熱いと感じる。
「Aちゃん、このまま俺んち来ない?まじで2人とも風邪ひくから」
誰がこの状況で、NOと言えるのだろうか。
素直に頷く私の頭を撫でて、佐久間くんはまたゆっくり歩き出した。
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ぴよまる(プロフ) - たまきさん» たまきさん、素敵な言葉をありがとうございます◎岩本さんのお話は、佐久間さん内でしょうか?それとも別物でしょうか?もしご希望あれば教えてください♪ (2021年2月4日 18時) (レス) id: c96c855ee5 (このIDを非表示/違反報告)
たまき(プロフ) - 完結、おめでとうございます!そしてお疲れ様です!とても面白くて、毎回更新されるのが楽しみでした。もしよろしければ、岩本さんのお話も書いていただきたいです!ご検討よろしくお願いします。 (2021年2月4日 11時) (レス) id: bb8fb0fba1 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよまる(プロフ) - りーぬさん» 嬉しいです…ありがとうございます◎番外編などなど、書いていこうかなぁと準備しています♪ (2021年2月1日 20時) (レス) id: c96c855ee5 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよまる(プロフ) - 柚さん» ありがとうございます◎どんなお話、シチュエーションをご希望ですかー!?書く準備進めています! (2021年2月1日 20時) (レス) id: c96c855ee5 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよまる(プロフ) - NORIさん» ありがとうございます…!その後はどんなお話が読みたいでしょうか?(^^)書く準備すすめております〜◎ (2021年2月1日 20時) (レス) id: c96c855ee5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぴよまる | 作成日時:2021年1月22日 11時