天涯の巫女と付喪神様

31話 約束 ページ31

折れた刀を治すのは
容易いことでは無い
髭切さんで
霊力をたらふく持っていかれたことを
思い出した
あの時はまだ護符があったから
なんとか凌げた
けど、今回は…
ぎゅっと握った紫の珠
元々、体の弱い私
これ以上回復しきれない事に
霊力を使えばもう本当に…

だからと言って
彼を放っておくなんて出来ない

紫の珠を両手で握る
願うように祈るように

お爺様…私、彼を助けたい
お願い、少しだけでいい
私にお力をお貸しください






「燭台切様に会いに行きましょ」

「阿呆か
君のことだ、伽羅坊を治そうとしてるのだろう

桔梗、死ぬぞ？」

「死ぬのが怖いからここにいて
見て見ぬふりをしろと？」

「あぁ」

「なら、私は鶴丸さんを
軽蔑します」

「なんだと？」

「確かに怖いです…
死ぬのが怖くないって思う人なんていません
死にたくなんかないです

けど、鶴丸さんのお友達が
泣いて苦しんでるのに
私は見て見ぬふりなんて
できません

鶴丸さんもそうでしょ？
見て見ぬふり、出来ないでしょ？」






真っ直ぐに俺を見てくる桔梗の目
優しい目だがその奥に見えた
不安が小さな手を震わせていた
そっと小さな手を掴み
その指に口付けた
びくっと肩があがった

そうだな…君の言う通りだ
だが、俺にだって
譲れない物がある
ぎゅっと握った手
この手でわかる、桔梗の命も
小さいことを
友と桔梗、天秤にかけることはない
すぐに友を選ぶ
だが、それは前の俺だ

今の俺は、桔梗を
選んでしまいたい
そんな気持ちがある

こんなに惹かれる人間は初めてだ
この短時間で持っていくとは…
認めよう
俺は、桔梗に惹かれてる
だからこそ
その小さな命を絶やしたくない

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