#93 ページ9
.
星海くんに図星なことを言われてから、私はボーッとコートサイドを歩いていた。
途中で叶歌が話しかけてきたり、雲雀田さんと挨拶を交わしたりはしたけど、いつもの様に何かを考え込んでいたわけではなかった。
「あ、すみませーん、ボール取ってくださーい」
アップをとるコートから、そんな声をかけられる。
足元に転がるボールを見て、私は迷わずそれを手に取った。
「…もう一度、コートにたちたい。」
ボールを見つめてそう呟くと、ユニフォームを着た選手が、私にそっと声をかけた。
「…久しぶり、カントク」
私のことを“カントク”と呼ぶ人なんて、極一部しかいない。
「…っ、
「声だけでわかるとか。相変わらずだなぁ」
笑いながらそう言った嘗てのチームメイトは、私の頭をそっと撫でた。
「後悔しないって言った言葉、私は忘れてないよ」
優しい目でそう言ってくる彼女に、私は思わず笑ってしまった。
「見張りみたいだね」
「そうかも。あんたはあれ以上バレー続けてたら確実に壊れてるもんね。ストッパーだよ。ストッパー。」
恥ずかしげもなくそう言った彼女に私も声を出して笑ってしまう。
「またバレーしようよ」
「…うん」
願わくば、あのチームで───────
「中島!サボるな!!」
「サーセン!今行きます!!」
先輩からの怒号に頭を下げた月灯は“じゃね”とかけて行こうとする。
「あぁ、そうだ月灯」
「ん?」
「今度、一緒にお墓行こ」
試合前の選手に言うセリフでは無いことは明白で。
でも、今言わなかったら言えないと思った。
「Aから言ってくるなんて珍しー」
「ちょっ」
「ごめんごめん。いいよ。ちゃんとどら焼き持っていかないとなー」
そう零しながらコートに戻っていく月灯の背中は、大きく見えた。
彼女は今、何を背負いながら戦っているのだろうか。
「応援、してるから!」
「カントクからの応援とか力入る」
笑った彼女を、照明が優しく照らした。
910人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
虹希(プロフ) - 水無月さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!待っていてくださるなんて…!本当にありがとうございます! (2021年8月25日 20時) (レス) id: 6f6e5985a0 (このIDを非表示/違反報告)
虹希(プロフ) - あまねさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます!これから単行本を入手し、少しずつ更新していきます…! (2021年8月25日 20時) (レス) id: 6f6e5985a0 (このIDを非表示/違反報告)
水無月(プロフ) - 下の方と同じくなんでもっと早く出会わなかったのか後悔しています((更新いつまでも待ってます!!!!応援してるんで!! (2021年8月16日 20時) (レス) id: e283fb9d1f (このIDを非表示/違反報告)
あまね(プロフ) - 待ってなんでこの神作に早く出会わなかったの?私バカなの?((((喧しいわ (2021年8月15日 14時) (レス) id: 1a6dd63888 (このIDを非表示/違反報告)
虹希(プロフ) - ハルジオンさん» ちまちま更新再開しようと思います!よろしくお願いします… (2021年2月5日 18時) (レス) id: 522ef85b27 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ