Another Story

小さな声に誘われて＿ymmt ページ35

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「…あったかぁ…」



缶コーヒーを両手で覆うと、かじかんでいた手が少しだけ復活した気分になった。



「遅いよばかぁ…」



コンビニの前に座り込んで待ち人を待っていると何組ものリア充たちが目の前を通り過ぎていく。



文系の私と違って理系の彼が色々忙しいのはよくわかっているつもりだ。



だからってこの仕打ちは酷いよ。



ため息を着きたいのを抑えて星空を見上げる。



東京の星は淀んでいて、やっぱりため息を着きたくなった。



「我が背子が 振り放け見つつ 嘆くらむ 清き月夜に」
「雲な棚引き」



ふと、待ち人の声が聞こえた気がした。



「Aならこの空見たらそう言うと思ってた」

「あははっ、待ちくたびれたよ」



ごめんね、なんて言いながら私の横に並んだ祥彰。



「QuizKnock？」

「まぁ」

「なら許す」



私はQuizKnockのファンだった。



そんなに気になるならはいる？と伊沢さんに言われたけど丁重に断った。



だって憧れの中に入るなんて私にはできないから。



「相変わらず好きだよね」

「祥彰が出てるからかなぁ」



してやったり、そんなふうに笑うと、彼は小さく息を吐いた。



「そういうの、ほんと狡い」



“早くいくよ”と言って歩き出す彼の後ろに着きながらも、もう一回私は空を見上げた。



相変わらず淀んだそら。



けど、一等星が輝いているのがわかった。

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