Accueil【伊沢拓司】 (ページ37)

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伊沢side

「はい、Aの勝利ー。さすが理系」

「工学系って意外と超伝導の論文読むんですよ」

“だから偶然です”

Aがそう続けると、須貝さんはわしゃわしゃと頭を撫でた。

そんな兄妹の様な姿に微笑ましいなんて思いつつ、嫉妬心を抱いてしまう自分を嘲笑った。

「偶然でもクイズ王に勝ったのは事実です！！」

須貝さんの言葉に悔しさが倍増。

唇を噛み締めながらも、再びその紙を見つめた。

…途中までは理解出来てるんだよな…

そんなことを思いながら、シャーペンを握り直すと、途端にAの呻くような声が聞こえた。

「…っ、っあ…はっ…っっ！！」

「っ、A！」

顬(こめかみ)のような場所が痛むのだろうか、それとも頭全体？

医学の知識なんて皆無に等しい俺は、台所にいるだろう須貝さんに向かって叫んだ。

「須貝さんは三守さんと水上に電話して、今すぐ来いって伝えて！！」

「えっ、なんで？」

「いいから速く！！」

三守さんならもう医者だからベターだけど、水上がだってもう6年生で、医学の知識も備わっているはずだ。

2人とも来てくれたら嬉しいけど、忙しいだろうし。

「っあ、たっ、くし…っ、だい…はっじょぶ…っ」

大丈夫じゃないことなんて丸わかりだった。

そして、この時の俺には焦りすぎていて救急車なんて選択肢はなかった。

“焦りはなにも特にはならない”

センター試験の日に、そう学んだはずなのに。