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伊沢side
ファルさんからAのリハビリが終わったという旨の連絡を受け、俺は席から立ち上がった。
「…俺が正解だと思うことが正解、か」
川上らしくないちょっとキザな台詞。
彼なりに俺のことを思ってくれているのも、Aのことを考えてくれているのも理解出来た。
「…ま、それがアイツらしさでもあるけれど」
ドSではあるけれど、彼はいつだって仲間のために動いている。
だからこそ、申し訳ないと思うこともあるんだけどね。
「ただいまー」
オフィスの玄関の扉を開くと、須貝さんの靴があった。
流石ファルさん。Aを1人にしない。
「あ、伊沢帰ってきたのね」
「拓司おかえり」
須貝さんとAが並んで座っていて、何か一つの紙に相対していた。
「何してんの？すげぇ面白そうじゃん」
「あ、伊沢もやっぱり気になる？」
座っている2人の間から顔を出すと、その紙には、須貝さんの専門分野でありそうな式が並んでいた。
「文系の伊沢には難しいかもな〜」
須貝さんの煽るような台詞に、昔からの負けず嫌いに火がついた。
「絶対理解してやる」
「相変わらず拓司負けず嫌いだね」
仮にも東大突破した人間だし、なんなら元東大王だぞ俺は。
「私も拓司には負けたくないな」
そして彼女もまた、大の負けず嫌いである。
「お、いいねぇ。Avs伊沢とか面白そうじゃん。サブチャン用に撮ってもいい？」
彼の問いかけに、俺は頷くことは無かった。
「拓司、先に15分考えてて。私が始めたのがそんなもんだから」
「え、15分経ったら忘れちゃうじゃん。だったら須貝さんに新しいの用意してもらおうよ」
“はい喜んで！！”
俺の提案に直ぐに頷いた須貝さんを見て、Aは面白そうにクスリと笑った。
「じゃあまだ裏にしといてね…」
須貝さんがカメラの方に向かい、カメラの操作を始める。
「じゃあ行くよ…？始めっ！！」
さながら東大入試のように、紙を捲る音がオフィスに響いた。
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