Accueil【伊沢拓司】 (ページ33)

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「あ、終わった？」

「終わりました！付き添いありがとうございます」

「いやいや。篠宮さんいないときついのは事実だから」

ファルさんはそう言うと、私の後ろについて、優しく車椅子を押してくれる。

「そうなんですか？」

「そうそう。映像処理できる人材を失うことは結構な痛手なんですよ」

巫山戯(ふざけ)ながらも、私の体を気遣ってくれる彼は、間違いなく優しい。

「はい、ちょっと抱きかかえていい？」

「あはは、大丈夫ですよ。急にそれされても何も言いませんから」

“それは俺が伊沢に殺されちゃう”

車について、私を抱きかかえて後部座席に座らせてくれながら、ファルさんはそう笑った。

「よし、大丈夫？」

「はい、大丈夫です！」

安心したような笑顔を浮かべて、ファルさんは私にシートベルトを差し出してくれる。

それを受け取り、カチッと音を鳴らすと、彼は優しくドアを閉めた。

ドアを閉める動作まで、優しさを感じられてしまった。

「途中で揺れたらごめんね」

「全然大丈夫ですよ」

そんなことまで気を使ってくれるファルさんに心の中でお礼を言った。

「事故には細心の注意を払いまーす」

彼のその言葉をきっかけに、静かにエンジンがかかる音が聞こえた。