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楽しい時間はあっという間に過ぎていった。
夕方、Aを見送って札幌まで運転する。誰もいない左側にはほのかに柔軟剤の匂いが残る。
”遥輝のおかげで楽しい2日間だったよ。ありがとう!”
すれ違った心とココロが急速に近くなった。またAの自然な笑顔を見れるようになった。たった2日のはずが、俺にとってはかけがえのない、忘れられない宝物になった。
”かっさらってくれる人がいい”
Aの好きなタイプも聞けたし、大きな収穫が得られたと思う。あいつは何気なく言うたのかもしれへん。
でも俺はAのことを本気でかっさらいたくなった。やんちゃな所があるあいつが女の顔をしていた。今にも消え入りそうな、切なく儚げな姿が苦しかった。
「Aちゃん、ほんまおもろいわあ」
「しかもめちゃめちゃノリいいし」
そんな姿を知らない2人は余韻に浸っとる。やっぱり追い返せば良かったかもしれへん。
「遥輝が嫉妬してる所も見れたし楽しかったよ」
「は?」
おそるおそる振り返れば、”きゅん”と呼ばれるほどの愛嬌とは思えへんほどに悪い笑顔をする雄也がおった。慎吾もほくそ笑んでいる。
「大スクープの予感っすねえ」
「な、なんの話や?」
「北のスピードスター西川遥輝、東海オンエアAに片想い……」
「大将と宮さんに置き土産しとこ」
「あの人達に言うたらあかん」
「あ、認めた」
「あ」
まんまと引っかかってもうた。慎吾はいひひ、といたずらっ子な笑みを浮かべる。
「最悪……」
完全に油断してた。別に気心知れてるやつらやからバレてもいいかもしれへん。でも昨日の今日、好きになった相手や。もう少し熟成させてから言うつもりやったのに俺としたことが……
「何だかんだで遥輝は20代のうちに身を固めるのかなあ」
「そうですねえ。でもAちゃんやったら遥輝さん任せられます」
「お前誰目線で言うてんの?」
人が動揺してんのをいいことに好き勝手言いやがって……
でもAと結婚したら……
疲れて帰ってきたらあの癒しの笑顔が出迎えてくれるってマジか?
あいつ自炊するって言うてたから美味い飯も食えるぞ?
子供ができたらオアシスが広がってんで?
「……最高やないか」
「なんか壊れた」
「妄想してんだよ」
2人はやれやれ、と言ったように苦笑いしていた。
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あおやなぎ(プロフ) - はるちゅんさん» ありがとうございます(^^) これからじゃんじゃん進めていくので楽しみにしていてください〜! (2019年9月1日 23時) (レス) id: c05e59e944 (このIDを非表示/違反報告)
はるちゅん(プロフ) - うおっ、最強!更新頑張ってください!お気に入りに入れます! (2019年9月1日 22時) (レス) id: 3445983938 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あおやなぎ | 作成日時:2019年8月29日 22時