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高3の秋、受験勉強に追われながら平凡な高校生活を送っていた。その日も夕飯を食べたら勉強と実技練習しなくちゃ……、と少し焦りを感じながらテレビを見ていた。
”内野手 西川遥輝 智弁和歌山高校”
『はるき……』
手が、時が止まった。その名前、その顔はどれも見聞したことがある。
”お前ちっちゃいなあ!”
”A、ここの計算合わへんねんけど……”
私をチビ、とからかってきた遥輝。算数や数学が得意で1位を争ってきたあの遥輝が、ドラフト会議で名前を呼ばれた。
”俺でもプロ野球選手なれるんかなあ……”
嬉しかった。親友とも呼べる彼の夢が叶う瞬間を目の当たりにできた。でも同時に焦りでいっぱいになった。
遥輝は努力で夢を確信に変えたのに、自分は不明瞭で切羽詰まって余裕がない。大学に受かったとしても、将来やりたいことができるのか……。私は全力で将来に向き合えているのだろうか。そんな不安が大きくなった。
”次に会う時は、お互い夢を叶えとこうな?”
岡崎に行く前、2人でこんな約束を交わした。約束通り、夢への第一歩を踏み出した遥輝が眩しかった。名前のごとく遥か遠くで輝いていた。
対して私はなんの強みもなく、夢が叶うか分からない。ちっぽけな私が遥輝の幼馴染を名乗っていいの?
成人式後、あかりを通した遥輝の誘いが増えた。
”西川くんがAに会いたいんだって”
”ごめん、会えないって言っててほしい……”
”この前から何があったん? あんなに仲良しやったやん……”
でもずっと断り続けてきた。約束を果たせない私なんかが、遥輝に会っちゃいけないから──
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「……Aさ、」
『ごめんなさい……』
あかん、怖い。怒られてまう。
「ほんまアホやな! 遠くなるわけないやろ!」
『え?』
不意打ちやった。恐る恐る顔を上げればあどけない、……いや、少し歳を取ったけど変わらない笑顔の遥輝がいた。
「俺にとっちゃな、お前の方が夢叶えて遠くなった気いしとったで? あかりさんに教えてもらってYouTube見たら、Aがドラム叩いてるし」
しかも人気やし、と見せてきたのは東海オンエア……ではなく、大学卒業とともに開設した個人チャンネルの動画だった。
「ビックリして腰抜かしたわ。卓さんは知らんかったけどな、Aファンの若手はゴロゴロおるぞ」
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あおやなぎ(プロフ) - はるちゅんさん» ありがとうございます(^^) これからじゃんじゃん進めていくので楽しみにしていてください〜! (2019年9月1日 23時) (レス) id: c05e59e944 (このIDを非表示/違反報告)
はるちゅん(プロフ) - うおっ、最強!更新頑張ってください!お気に入りに入れます! (2019年9月1日 22時) (レス) id: 3445983938 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あおやなぎ | 作成日時:2019年8月29日 22時