コーヒーとルームメイト ページ8
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タクシーの中、私たちはずっと話し込んでいた。特に彼について。話を聞くと、どうやらフーリッシュには家がないらしい。
どうやらアンドロイドは作られたとたん、野良犬のように野に放たれてしまうんだとか。
「その君を造ったマスターとは、もう会えないのかい?」
「いいや、年に一度メンテナンスがある。
僕らアンドロイドは生まれたとたん家も家族もいないから、年に一度面倒を見てくれるだけでもありがたいと思うべきだ」
「・・・君さえよければ、僕と同居するかい?ちょうど部屋がひとつ余ってたんだ、狭い部屋だけど居心地は悪くないよ」
「そうか、ではお邪魔しよう」
「ふふっ。なあ、マスターってことは、君にお母さんはいないんだろ?」
「ああ」
「お腹を蹴りすぎて"フール"という名前になった可能性は消えたな」
「・・・ああ、そうだな」
薄ら笑みを浮かべたフーリッシュは、運転手に代金を支払い、私をおろしてくれた。
小さく狭い我が家の鍵を開け、きしむ扉をくぐり、フーリッシュを我が家に招きいれる。
「狭くてすまないね、でもソファやテレビはあるから好きにくつろいでくれ。
コーヒーでも?」
「ああ、ブラックで」
「了解」
コポコポとコーヒーをそそぐ音や皿の音が、いいBGMだ。
ふと窓の外を見ると、外は薄暗くなっていた。キッチンの端にあるスイッチを押すと、部屋全体のカーテンが一斉に閉まる。
小さな家とはいえ、ある程度のシステムやセキュリティはあるのだ。
「お待たせ」
「どうも」
私たちは同時にコーヒーを飲んだ。
「・・・君、初めてコーヒーを飲んだのはいつだい?」
「今が初めてだ」
「ブラックで良かったのか!?」
「ああ、ドラマで見たんだ。人間がカフェの方のマスターにブラックを注文していた
なかなか悪くない味だ」
「あ・・・それでドラマの真似しようとブラックに・・・」
見かけによらず案外こどもっぽい一面もあるものだな、と 私は彼を見つめた。
「次はカフェオレに挑戦するつもりだ」
どこか嬉しそうなフーリッシュ。思わず私もその笑みに釣られて、口元が緩む。
「そうか、じゃあ明日はカフェオレを飲んでから出勤するとしよう」
こうして、フーリッシュと私の、小屋のように狭い家での同居生活が始まった。
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クロユリ☆★(プロフ) - ここりどらすさん» わあ、嬉しいです!ありがとうございます(^^*) (2019年8月23日 1時) (レス) id: 0bca962c48 (このIDを非表示/違反報告)
ここりどらす(プロフ) - 好きです。8点入れさせていただきました。 (2019年8月22日 23時) (レス) id: af90c931db (このIDを非表示/違反報告)
クロユリ☆★(プロフ) - ぐうたら猫さん» ご報告ありがとうございます!これからも頑張ります! (2019年2月8日 18時) (レス) id: 0bca962c48 (このIDを非表示/違反報告)
ぐうたら猫(プロフ) - こんばんは。誤字があったので、ご報告します。『彼の感情』の後半、機械が機会になってました。修正と更新、頑張って下さい! (2019年2月8日 17時) (携帯から) (レス) id: e6816c78e0 (このIDを非表示/違反報告)
クロユリ☆★(プロフ) - 夜桜さん» わかりました!拝見させていただきますね! (2018年8月14日 19時) (レス) id: 0bca962c48 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クロユリ☆★ | 作成日時:2018年7月25日 13時