彼からの警告 ページ24
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しばらく歩いてたどり着いたのは小さな服屋だった。カウンターには小さな女の子が机から顔半分をのぞかせている。
どうやら店番をしているようだ。
「いらっしゃい」
女の子はどこか恥ずかしげに言う。私は彼女に問いかけた。
「こんにちは。君の親御さんに会いに来たんだけど、いまお留守かな?」
「ううん、いるよ」
女の子はそう言うと、店の奥へ走っていった。少しすると、小柄で端正な顔立ちの女性が娘の肩を抱き、私たちに頭を下げた。
「いきなり呼んでしまってごめんなさい」
「いいえ、とんでもない」
私は彼女に座るようにうながされた。フーリッシュにとなりの椅子を叩いて示すと、彼はゆっくり腰掛けた。
「なにか事件が?」
彼は待ちきれないとばかりに身を乗り出し、たずねた。女性は震えた手で娘の肩を強く抱き、呼吸にすらかき消されそうな声で言った。
「"彼ら"に・・・追われているんです」
「"彼ら"?」
「ええ、何年か前の事です。私は旦那を亡くし、彼の葬儀に参加しました。
その翌日、ベージュの・・・赤い蝶ネクタイのスーツを着た男性が私たちをたずねてきて」
急に黙り込んでしまった。その手の震えはさっきより酷く、顔は青ざめていた。
「"あなた達は彼らに狙われている"と、そう言いました」
「その男の特徴は?」
フーリッシュからピピピと機械音がする。情報をコピーして保存しているのだろう。
念のため私もメモ帳とペンを取り出し、男の特徴を聞くスタンバイをした。
「クリームでかためた茶髪に、深い青色の瞳。年は40歳くらいの男性で、優しそうな人でした」
「けれど彼は"狙われている"と警告した。それには何か意味がある」
フーリッシュが言う。
「私もそう思ったのです。でも、彼の言葉の意味が分からなくて───
それであなた達をお呼びしたんです」
「ただのイタズラかも」
私が言うと、フーリッシュは私を振り返り、何かの紙切れを取り出して言った。
「これがイタズラだと?」
そのメモにはこう書かれていた。
『Please don't think this warning is a joke.』
"この警告を冗談だと思わないで"
えらく丁寧で優雅な筆記体が、彼女たちに危険を呼びかけていた。彼女を見ると、まだ未だに青ざめたまま娘を抱きかかえている。
「彼の居場所は知っていますか?」
「いいえ・・・それっきりだったので」
「そうですか。ではこれで失礼します。警部、行きましょう」
「え?あ、ああ。お邪魔しました」
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クロユリ☆★(プロフ) - ここりどらすさん» わあ、嬉しいです!ありがとうございます(^^*) (2019年8月23日 1時) (レス) id: 0bca962c48 (このIDを非表示/違反報告)
ここりどらす(プロフ) - 好きです。8点入れさせていただきました。 (2019年8月22日 23時) (レス) id: af90c931db (このIDを非表示/違反報告)
クロユリ☆★(プロフ) - ぐうたら猫さん» ご報告ありがとうございます!これからも頑張ります! (2019年2月8日 18時) (レス) id: 0bca962c48 (このIDを非表示/違反報告)
ぐうたら猫(プロフ) - こんばんは。誤字があったので、ご報告します。『彼の感情』の後半、機械が機会になってました。修正と更新、頑張って下さい! (2019年2月8日 17時) (携帯から) (レス) id: e6816c78e0 (このIDを非表示/違反報告)
クロユリ☆★(プロフ) - 夜桜さん» わかりました!拝見させていただきますね! (2018年8月14日 19時) (レス) id: 0bca962c48 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クロユリ☆★ | 作成日時:2018年7月25日 13時