１１ ページ31
長い指先が、髪から降りて、頬を撫でる。
ゆっくりと唇に触れられて、
時が止まった気がした。
「A・・・好きや」
掠れた声で呟いて、
唇から離れた指先。
寂しいって思った瞬間に、
唇が重ねられた。
離れたら、
忠義くん、照れたのか、
「恥ずかし」
早口に言って、苦笑いして。
そのくせ、もう一度、唇、重ねる。
今度は、さっきよりも、長く・・・
きつく抱きしめられて、
幸せなのに、泣きたくなる。
この時間が、永遠なら、
何も怖くないのに・・・
バサっと、何か落ちる音が聞こえて、
やっと人の気配に気付いた。
慌てて離れて、顔を上げたら・・・
恵理さんが呆然として、私たちを見てた。
傷付いた、泣き出しそうな顔になって。
慌てて、落とした大きな封筒を拾ってる。
「ごめんなさい。
忠義、何回かけても電話出えへんから。
頼まれてた資料、直接持って来てんけど・・・」
「ああ、ごめん。
電話、部屋に置いて来た。
メールで良かったのに」
忠義くんがベンチから立ち上がって、
恵理さんのところに駆け寄ってく。
「紙の方が見やすいやろ？」
忠義くんを見つめる恵理さんの目からは、
隠そうとしても、恋心が溢れてる。
「うん。
ありがとうな」
「ううん。
私に出来ること、これぐらいやから」
「ほんま助かる。
また改めて礼するわ」
「ええよ、お礼なんて。
大したことしてないし。
じゃあ、私、帰るね」
恵理さん、
離れたまんまの私に一礼すると、
駆け出して行く。
「追いかけなくて、いいの？」
思わず、意識の奥にあった声が、漏れてた。
「え・・・？」
忠義くんが驚いて、息を飲む。
「A？何言うてんの？」
そんな顔されたら、
引っ込みなんて、つかなくなった。
「恵理さん、泣いてたんじゃないかな」
「口実作って、忠義くんに会いに来たんだよ」
「会いたかったから」
「忠義くんが好きだから」
「恵理さんのとこ、行ってあげた方がいいよ」
こんなこと、言いたいわけじゃないのに・・・
「それ、本気で言うてんの？」
忠義くんが、怒りを抑えた低い声で呟いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 434人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ハナ(プロフ) - 久しぶりに読ませていただいてますが、どうでもいい事だと思いますが、同僚の女医さんの名前が恵理から絵理に表記が変わったのは何故でしょう？ (2020年6月8日 13時) (
レス) id: cdf748f88b (このIDを非表示/違反報告)
yume.no.(プロフ) - 大丈夫ですかー！！！消えてしまったらショックですね、、、やっぱりこのお話はエネルギーたくさん使うんですね> < 私は毎日とても楽しみにしていますが、あまり無理されないでくださいねー！ (2020年4月17日 11時) (レス) id: 979f5b0d6b (このIDを非表示/違反報告)
りり(プロフ) - 連続更新嬉しいです♪お話は辛い展開だけど、穏やかな春が来る事を切に願います…そうそう、foolさん韓国アイドル未知ですか？めっちゃ勿体ないです(笑)世界で1番のイケメンに選ばれた人がいるボーイズグループに現在夢中です☆勿論こちらの作品にも夢中です！！！ (2020年4月16日 22時) (レス) id: ac3afc1999 (このIDを非表示/違反報告)
ひ み さ(プロフ) - 日々、こちらが更新されていて、ホントにありがたいです(*^^*) foolさんのペースで…♪ (2020年4月16日 16時) (レス) id: 3389004d8b (このIDを非表示/違反報告)
happiness☆(プロフ) - いつも、読ませていただいております。書いたものが消えてしまうのはショックですよね。そんな中、更新して下さろうとしていただき、ありがとうございます。ご無理をなさらず。 (2020年4月16日 12時) (レス) id: aa5838f8d2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：fool x他1人 | 作成日時：2019年12月20日 19時
