春色列車。３

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やっぱり、私たちには、
離れ離れの未来しかない。

そう思う。


「Aもええと思わん？
こんな可愛い家。
庭にAの好きなスイトピー植えよ」


「うん。そうだね」


曖昧に答えるしか出来ない。


別れを伝える瞬間が来るまでは、

忠義くんの恋人でいたい。



「日常生活に慣れたら、
事務の仕事にも戻って来いや。
みんなAちゃんに会いたがってる」


村上社長が、
戻ってくるのが当然のように、言ってくれた。


「ありがとうございます。
でも迷惑かけちゃうんじゃ・・・」


「迷惑なんかとちゃうわ。
お客さんも社員もみんな、
Aちゃんの笑顔を待ってる」


だけど、忠義くんと離れた後は、
お母さんのところに行くつもりだから。

もう大阪にはいられないんだ。

まだ何も言えない。


村上社長、敏感なところあるから。


「じゃあな。
あんまり長居してもあれやし。
そろそろ帰るわ」


挨拶もそこそこに、マンションの部屋を出て。

本当にすぐに。


村上信五Aちゃん、早まったらあかんで。タツと離れるやなんて間違うても考えるなや。


そんなラインが届いた。


「誰から？ヤス？」


忠義くんが、少し不安そうに聞く。


「うっ、ううん。
お母さんだよ」


焦る余り、嘘ついちゃった。


「お母さん、Aに会いたいよな。
今度の日曜日、スイトピー見に行った時、
会いに、実家に寄ろ？」


「うん、ありがと」


日曜日。


その日が、私たちが、恋人でいられる、最後の日。


「楽しみやなあ。
二人きりの旅行。
実はな、もうペンション取ってあるねん」


忠義くんが、
携帯で、予約してくれたっていう、
ペンションのホームページ見せてくれた。


「うわあ。可愛い部屋！」


思わず歓声あげた私に、
忠義くん、満足そうな得意げな顔してる。


「やろ？
絶対にA、気に入る思ってん。
部屋から海も見えるねんて」


「嬉しい。
忠義くん、ありがと」


「なら、キスしてや」


甘えた声で言って、
忠義くん、自分のほっぺた、
指でちょんちょんてつついて。

身体屈めて、顔を寄せる。

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