春色列車。２

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「別に何もいらんで。
俺の方こそ、
毎日、いろんなもん、もらってる」


「ううん、何も返せてないよ・・・」


「そんな事ない。
Aちゃんの笑顔見てるだけで、
俺、元気になるし。
仕事も頑張れる」


言うてもうてから、
めっちゃ照れてきた。

Aちゃんも、真っ赤んなって、大変や。


「毎日、ドジなとこ見て、
わらけるし」


付け足したら、


「もお。ひどい！」


って、ふくれた。


その顔も、めっちゃ可愛ええ。

今、最高潮に、幸せやな。





イルミネーションの光の中。

人波ではぐれへんように、
手を繋いで、
俺のコートのポケットにしまう。


「大倉さんの手、すごくおっきい」


Aちゃんが、
ちょっとびっくりしたように、言った。


「俺、クマみたいに身体でかいからな」


「うん。
すっごく見上げないと、
話せない」


ヤスと比べてる？


Aちゃんのタイプって、
中身だけやなくて、
外見も、ヤスがドンピシャなんかな。


せっかく二人きりでおんのに、
また、やきもち妬いてるし。


「もしかして、首痛い？」


冗談めかして、聞いたら。

こくん、てうなづいて。


それから。


「そんな風に、屈んで覗き込まれると、
・・・ドキドキするから、困る」


そんな可愛ええこと、言うねん。


俺も、めっちゃドキドキしてるし！

さっきからもう、心臓、突き抜けてきそうやねん。


ちょっとカッコつけたいし、
その本音は押し殺して。


「ほんまやな。
顔、真っ赤っかやわ」


からこうたら、

また、怒るか思たのに、

Aちゃん、黙って、
唇噛んで、ふいって、横向いただけ。


「なあ、今日さ、」


なんて言おう。

緊張してきた。


泊まってもええ？

直接的過ぎる？


いや、これ以外に言葉、浮かばんやろ。


イルミネーションより、
俺は、Aちゃんばっかり見ててんけど。

Aちゃんも、めっちゃ緊張してるみたい。


まさか、Aちゃんから、誘ってくれたりする？


いや、それはないか。


Aちゃん、やっぱ、
キスもしたこと、なかったもん。


そこは、ヤスに感謝してるねんけどな。


「大倉さん、」


「大倉さんちゃうやん。
ヤスん前で呼んでたみたいに、言うて」

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