・ ページ10
side yugo
門を出て、二人でゆっくり歩く。
「ほくと、今日は学校どうだった？」
『ん、たのしかった！絵本さわったよ！』
外を歩くというのは、全盲の北斗にとってとても勇気のいること。
まだ白杖を上手く使えないから、俺の手だけが頼りなわけで
大人の歩く速さ、まして目の見える人の速さは、北斗にとっては少しこわいから。
一歩一歩歩くそのスピードに、できるだけ合わせるように。
『ぱぱ、きょうはいい天気！』
「うん、いい天気だなぁ。パパ暑いよ〜」
『えー！ほっくんは、あつくない！』
「はははっ。元気だなあほくと。
お、右にまがるよー」
登下校はいっしょに。
徐々に学校間の道や、空間の概念を覚えていかなくちゃいけない北斗。
俺は毎回、ここを右、信号を渡るよ、と言葉で伝える。
『ぱぱぁ、』
「ん？どうした？」
『たいようは、ほんとうに空にある？』
突然そう言って、北斗は真っ青な空を見上げた。
夕方といっても、そうは思わせない夏の、
雲ひとつない快晴で、太陽は眩しいほど北斗を照らす。
「うん、あるよ。
…信号が赤だから、止まろう。」
……この空の明るい光すら北斗は知らないと思うと、親心がちくりと痛む。
『…さわってみたいなあ』
白杖でこつんこつん、とアスファルトを鳴らした。
家でも、盲学校でも、身の回りのいろんなものを手で触って、形や感触を確かめてゆく北斗。
だけど、太陽はさわれないもんね。
小さな瞳が、心做しかさみしそうで、思わずまた胸が痛んだ。
その時、後ろから子供たちの声が聞こえて、思わず振り返る。
ランドセルを背負った子供たちが、元気に下校してゆく姿。
あの帽子は、うちの校区の小学校だ。
「……ほくと、青になったよ。歩こう」
『はーい』
迫ってくる男の子4人のグループ。
そのうちの1人が走り出して、
その子を追っかけるようにして3人も足を速めた。
思わず、北斗をぐいっと自分の方へ引き寄せる。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 640人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SixTones」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
晴(プロフ) - ゆっこさん» ご愛読ありがとうございます！大変励みになります。今後もよろしくお願いします！ (2020年8月10日 12時) (
レス) id: 924db004c7 (このIDを非表示/違反報告)
ゆっこ(プロフ) - 素敵な作品をありがとうございます。 (2020年8月9日 18時) (レス) id: 354b579e15 (このIDを非表示/違反報告)
晴(プロフ) - りんご。さん» 申し訳ありません。現在リクエストは停止させて頂いております。募集再開の目処も立っておりません…ご期待に添えず申し訳ないです…作品、読んでいただきありがとうございます。 (2020年5月30日 22時) (レス) id: 924db004c7 (このIDを非表示/違反報告)
りんご。 - リクエストしても大丈夫ですか！ (2020年5月30日 22時) (レス) id: a530807534 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：晴 | 作成日時：2020年5月30日 17時
