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入っていたのは、宛名の書かれていないポストカードだった。
それを裏返して、俺は思わず 涙声で君の名前を呟く。
太陽みたいに力強い、黄色の菜の花畑と
そこに敷かれた線路を走る、赤い2両の列車。
…それは、君と見たあの美しい風景だった。
「ほくと…っ」
写真の端に書かれた文字は、紛れもなく君のもので。
俺は震える視界の中で、君の言葉を抱き寄せた。
“ おれの人生で 一番の 記憶。 ”
“ 大我が これからさき もっと
美しい人やものに 出会えますように ”
全身の力が抜けて、俺は床に崩れ落ちるようにして泣いた。
子供のように声を上げて、それでも君への気持ちは、涙を留めてはくれない。
ぼんやりと浮かんだ、君の書いた字を、俺は指先で何度も撫でた。
…北斗は、俺の記憶を彩ってくれていたのだ。
花のように爽やかな香りと、砂糖菓子のように甘い味を添えて。
それから俺は、封筒の底に何かを丸く包んだティッシュペーパーを見つけた。
開けてみるとそれは、
黄緑、黄色、ピンク、白…色とりどりの金平糖。
「へへっ…」
俺の目を盗んで、こっそり取っておいたのかもしれない。北斗のそんな姿を想像すると、頬が緩んだ。
金平糖を手のひらに乗せたら、ひとつ摘んで
そっと口の中へと運ぶ。
口に広がった甘い香り。それはまるで、君がくれた愛のようだった。
君が向けてくれた、俺への優しい眼差しみたいだった。
君は、なんて愛おしいんだろう。
懐かしくなんてない、でも俺は、それをずっと求めていた。
「…ぁりがとね、北斗っ」
金平糖のように色鮮やかで、砂時計のように儚い、
そんな記憶の欠片を この手に抱いてなら、俺は生きてゆける気がした。
その欠片には、
君の温もりが 確かに今も残っているのだから。
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晴(プロフ) - 名前しずくさん» あとがきまで読んでくださったんですね(^^) 2人はこれからもお互いを想いやっているはずです…！ 長らくのご愛読、ありがとうございました！ (2021年10月5日 19時) (
レス) id: 924db004c7 (このIDを非表示/違反報告)
名前しずく(プロフ) - 金平糖を贈る意味がとっても素敵で、お話にも合っているなあと感じました。今までお疲れ様でした。 (2021年10月4日 9時) (レス) @page44 id: 0ac6e112f4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：晴 | 作成日時：2020年10月21日 20時
